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郁金(うこん)


 ウコン白い蝋細工(ろうざいく)のような美しい花を見て、感動したのを覚えています。ショウガ科の植物の花は、ランのような艶やかさがあります。蝋細工のような白い部分は葉の変形であって、花は下の方に小さく咲いているものと教えてもらったのはその後です。食用植物の花を見られるのは栽培の喜びでもあります。

 ウコンは黄色の色素になるので、キゾメグサとの名前もついています。英語の香辛料の名前でターメリックですから、子どもたちが大好きなカレーの成分としても知られています。

 最近は、健康食品としてウコンの粉を飲んでいる人が相談にやってきます。

 「肝臓の保護作用があるっていうからどのくらい飲んだらいいのかねぇ」近所のおばあさんのFさんが、おいでになりました。八十三歳になりますが、現役で畑仕事をしています。やせていて腰も曲がって、今では遠くから見ると畑の中に下半身だけが立っているように見えることもあるくらいです。

 「肝臓の働きを良くするって言うようになったのは最近の人なんだよ。私の先生は、イライラでわき腹やおなかやお乳が張って痛くなったときに使うと楽になるって教えてくれたんだよ。もし続けて飲むのなら、ショウガの親戚だから、耳かき一杯湯冷ましに溶かして使うといいと思うよ。冷たい飲み物や生ものをとり過ぎたりして、胃が水浸しになったり冷えたりして働かなくなったときに、効くよ」。痩せて手の暖かいおばあちゃんに舌を見せてもらうと赤みが強くひからびて小さくなっていました。「おばあちゃんにはあまり合わないようだね。口が渇くようならやめたほうがいいよ」Fさんが残念そうにしていたので、「レンコンの煮ものや温かい豆乳のほうが、おばあちゃんの肝臓には滋養になると思うけどなぁ」と勧めてあげました。

郁金(うこん)ショウガ科ハルウコンの根。中国では子宮内膜症や肝臓や胆のうや胆管の炎症による張りや痛みを散らす場合に使う。



薤白(がいはく)


 「眠る男」の監督をした小栗耕平さんを知らない人は、少ないと思います。彼の作品に「伽?子のために」という李恢成さんの小説を映画化したものがあります。数年前に、私は、知り合いからの紹介で三浦半島にある駅から十分ほど歩いた患者さんの家を訪れようとしたときに、あたかもその映画のセットに踏み込んでしまったかの錯覚におちいりました。

 住宅展示場のような街並みを抜けると、その一角だけ泥道で木造の戦後まもなく立てたろうバラックが身を寄せるように集落を作っていました。その一軒に通されると、心不全の診断を受けてやせ細ったTさんが待っていました。近所の人が時々覗き込む中で、漢方の相談を終えて、動悸や息切れ・胸の苦しさの原因は、心労と思われるので、精神的な負荷を具体的に減らすように指示しました。

 漢方薬は、■楼薤白半夏湯をベースにした処方を提案しました。■楼仁シナカラスウリの種です。胃腸の働きが低下して、漢方でいう体内の水のよどみができて、それによって胸が苦しくなる不快症状を軽減する働きがあります。半夏カラスビシャクの塊茎です。同じように水のよどみによる胸の苦しさのほか、動悸や悪心・めまい・不眠などを軽減します。薤白は、体内の水のよどみを温めて胸や背中の痛みや胸苦しさを軽減する働きがあります。

 漢方薬を飲み始めたからか、心労の原因を少なく出来たからか、一ヶ月ほどしてTさんの胸の痛みは始めの四分の一程度に減りました。

 その後も、バラックをうかがうたびに、調子に乗って浮かれている自分は実は日の当たる一方しか見ていないのだと、くり返し気付かされた記憶が今でも消えません。

薤白(がいはく)ユリ科ラッキョウ・チョウセンノビルの地下鱗茎。辛さと温める働きで胸部や腹部の水や気のよどみを発散して痛みを軽減する。

■→木+舌



川楝子(せんれんし)


 M市のS君は、高校二年生。青春真っ只中のセブンティーンです。学校の成績もそこそこなのですが、彼を悩ませていることがあります。キューンとなってしまうのです。別に好きな女の子が出来て、胸がキューンとなるのなら自然な反応です。問題は、授業中にお腹がゴロゴロとかキューンとか鳴ってしまうので、最近は保健室登校を続けているという相談なのです。ときには、いくらかお腹が痛くなってしまって、調子の悪いときは下痢をするというのです。

 かなり思いつめた表情から、悩みの深さが感じられます。若さゆえ、余裕がありません。こういうときは、親を始め大人たちは「そんなことを気にするな」と本人の感情を否定しがちです。ところが、その言葉がよけいに本人を追い詰めてしまいかねません。

 初対面の私は、「そういうことってあるよね」「教室にいられない気持ちはわかるよ」と否定しないように心がけます。「で、どうしてそうなると思う?」と逆に質問します。しばらくの沈黙の後に、「緊張するから・・」とか「朝ご飯を食べるとよけい鳴るようだから、食べないようにしているのに・・」とか返事があるので、「じゃあ、どうしたらいいと思う?」ということで、彼の考えを実行して、その結果を次の相談のときに聞くようにしています。

 川楝子は、漢方でいう肝・胃・小腸・膀胱の気の流れを整えて、脹りをとったり痛みを軽くする働きがあります。

 たまたま別の日に、彼の担任の先生が相談にやってきました。出勤前に自宅で便がスッキリしなくて、出勤途中でも公園やコンビニのトイレに駆け込むことが増えて、困っているとのことでした。「ときどきありますよね・・」

 二人とも、川楝子を含んでいる開気丸(かいきがん)という丸剤で、コントロールできるようになりました。

川楝子(せんれんし)センダン科トウセンダンの成熟果実。せかせか・いらいらする人のわき腹や下腹の痛みや脹りに効果がある。別名、金鈴子。



烏薬(うやく)


 長野の松本に行く機会があって、帰りに小腹が空いたので、蕎麦屋に入りました。ニシンそばが目に入ったので、旨味のあるニシンを堪能させてもらいました。

 ニシンといえばコンブです。以前、大阪の阿倍野にある辻調理師専門学校で、薬膳の講演のお手伝いをさせていただいたときに、校長先生から教えていただいた話を思い出します。昔の人は、ニシンとコンブを合わせて炊くことでニシンの成分でコンブが軟らかくなりおいしくなり、コンブの旨味でニシンが更においしくなるということを誰かが気が付いて、ずっと伝えてきてくれたというお話です。まさに、伝統料理は智恵の宝庫です。

 S村のNさんは、子宮内膜症の強い痛みを何とかして欲しいと漢方相談にやってきました。婦人科で偽閉経療法で使う点鼻薬も効果が認められず、出産も希望していました。婦人科では桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)という処方を一年近く使っていましたが、変化が見られません。

 そこで、近くの医療機関に勤務していた松橋和彦医師と相談して、■帰調血飲(きゅうきちょうけついん)という処方に、烏薬香附子(こうぶし)延胡索(えんごさく)を加えて、せんじ薬を作りました。たいへん飲みにくい薬でしたが、半年飲むと痛みが二割に減りました。

 漢方では、薬草の特別な組み合わせによって、効果を高める方法が昔から言い伝えられてきています。ちょうど、ニシンとコンブの組み合わせのように、黄耆と防風当帰と川■など、本が書けるほどです。将棋に例えるなら、それぞれの駒の組み合わせを知っているかどうかで、敵を追い詰められるか逃がしてしまうかが分かれるのと同じです。

 Nさんは、その後一年して妊娠に至りました。
 
烏薬(うやく)クスノキ科テンダイウヤクの肥大根。寒さの邪気によって腹部や胸部の痛みや、泌尿器の冷えによる頻尿に用いられる。

■→草冠+弓



木香(もっこう)


 「失礼しますっ!」大きな声と同時に頭を深く下げて、相談室に入ってくるKさんは、体重八十`超級のマッチョです。柔道をやっていたので、いかにも体育会系の気持ちのいい挨拶をしてくれます。「先生のお陰さまで、この子を授かりました。コノカといいます」。二ヶ月検診の帰りに、赤ちゃんを見せに来てくれました。

 「どんな字を書くの?」「はい、恥ずかしいのですが、木の香りと書きます」「いい名前だね。漢方薬に使う薬草の名前と同じだ。爽やかな香りで胃腸の働きを目覚めさせる働きがあるんだよ」「光栄です」。彼の大きな手のひらにスッポリと収まってカワイイ寝息を立てているコノカちゃんの幸せを祈りました。

 動物にとって香りは敵味方を判断したり、生殖に深い関係があるようですが、人間にとっては、食欲にも関係があるようです。

 日本でよく使われる漢方薬では、木香帰脾湯(きひとう)に含まれています。帰脾湯は、心配のしすぎで胃腸を弱めて寝つきが悪い・眠りが浅い・夢をたくさん見て疲れが取れないという「心脾両虚」タイプの人に勧められます。舌の引き締まり方が弱く、色も薄いのは、胃腸の力が弱くてせっかく食べたものも、消化吸収されずに泥のような便が出る場合もあります。

 帰脾湯には、体に元気をつける薬草がいくつか含まれています。胃腸が丈夫な人ならなんでもないそういった薬草も、胃腸の働きが低下していると、それさえも胃腸の負担になる場合もあります。木香はせっかく含まれている滋養強壮の薬草を消化吸収しやすくするように働いてくれるのです。ちょうど、おにぎりを食べるときに、漬物(香の物)があるとおなかにすんなりと収まるのと同じようです。

 実は、木香の香りは爽やかというより個性的な香りです。

木香(もっこう)キク科トウヒレン属植物の根。ストレスや食べ過ぎなどによるお腹の張り、痛み、吐き気に使われる。



烏梢蛇(うしょうだ)


 日本の漢方薬の材料は、ほとんどが植物です。変わったものでは、牡蠣の貝殻などもありますが、葛根湯などを見ればわかるように、食べ物の延長です。中国医学では「血肉有情」といって動物から選んだ漢方薬の材料は作用に力があるので、よく使います。も中国漢方の材料になります。たいていの蛇は「陽気」を高めます。冷えを伴う関節痛や筋肉痛によく使われます。

 日本の民間療法にもマムシ酒があります。友人のYさんは慢性の腰痛持ちで、疲れると繰り返し痛みで悩んでいました。四国・徳島の知り合いからマムシ酒を譲ってもらいました。とても生臭い匂いがして口に運ぶには勇気が要りました。知り合いから「塗ってみな」といわれ、その通りにすると不思議なことに痛みがウソのように楽になりました。

 しかし、「陽気」(身体を温める力)を高める力が強いので、「陽気」不足の人には適していますが、「陰血」(身体が温まり過ぎないようにする力)不足の人が長く使うと副作用が出ます。「陰血」不足の人は、もともと動悸・焦燥感・微熱・震え傾向がありますが、その程度が高まります。気を付けなければなりません。

 前の戦争のときに、南方に兵役で連れて行かれた人の中に、陰血不足の体質の人がいました。食べるものが送られてこないので、食べられる物がなくなって、蛇を毎日のように食べました。ある日気が付くと、舌が蛇のように真っ赤で、全身の皮膚にウロコが出来たように乾き痩せ、体はほてるのに震えが止まらなくなりました。蛇の祟りではなく、体質の偏りが極まってしまったのです。

 中国には、ヤモリのお酒やトラの骨のお酒など、いろいろな漢方酒もあります。しかし、体質を考えないと力が強いだけに間違えると大変なことになります。熱があって脈打つように痛い時には、もっと痛くなるケースもあります。

烏梢蛇(うしょうだ)ナミヘビ科のヘビの内臓を除いて乾燥させたもの。リウマチから半身不随や顔面麻痺などの痛みやこわばりにも使われる。



桑枝(そうし)


 桑のゴツゴツした幹から、ピンと伸びた枝の姿は、上州の風物詩です。一時は放置されてアメリカシロヒトリの巣になっていた桑畑も、最近はほとんど見られなくなりました。

 子どもの頃に、見たテレビで、長門勇が鼻の下を右手の人差し指でこすりながら鼻をすすり上げていました。ちゃんばらごっこでは刀を持たずに、私は決まって槍の役に名乗りを上げていました。三十年前に東京で太極拳を習って帰郷してからは、中国武術の研究家の故伊藤聡先生に棍術(こんじゅつ)を教えてもらいました。二メートル近い棍の材質は桑の枝です。「まっすぐになるように、育てるのも大変だよな。刃物で切ろうとしても粘りがあるから、刃を捉えてしまうんだよ。樫の木刀は自分より硬いものに当たると折れるけど、これはしなってなかなか折れないよ」といって、風を切る音を楽しんでいました。

 漢方では、患部に熱があれば冷やす薬を使い、冷えがあれば温める薬を使うのが原則です。ところが、この桑の枝は、両方に効く便利な薬草です。関節痛や動かしにくい状態によく使われ、効果もすぐれています。なにも、高い漢方薬を飲むばかりが能ではありません。肩でも肘でも手首でも、腰でも膝でも足首でも効果が期待できます。赤く腫れていて温泉に入ると反って熱が出て腫れてしまう場合でも、温めると楽で温泉が何より楽しみの人でもお勧めできます。問題は、錠剤や粉になっているものが無く、煎じるしかないところです。

 ちなみに、桑の葉を食べた蚕(かいこ)のフンを蚕砂(さんしゃ)といって、これまた、関節痛にお勧めします。これは、温める力があります。冷えると痛い関節痛に、布袋に入れた蚕砂を蒸し器で蒸して、患部に当てます。これもお金のかからない治療法です。一体だれが最初に気が付いたのか、漢方の智恵には驚かされます。

桑枝(そうし)クワ科カラグワの若枝。関節痛の他にひきつり・運動障害・むくみ(特に下肢)に効果がある。半身麻痺の軽減にも使われている。



通草(つうそう)


 報道によると、産科のお医者さんが少なくなって、安心してお産に臨めない状況が広がっているとのことです。中国では、出産は女性のその後の健康にとって大きな影響を大きく左右するものなので非常に重要視します。漢方では、出産後一ヶ月は産婦に外の風に当たったり冷たい水をさわらるべきでないと考えます。出産によって衛気がゆるんで邪気が侵入しやすくなり、後で治りにくい不定愁訴が出やすくなるといって、戒めています。ご飯作りからオムツ洗いまでお父さんががんばります。

 産婦の仕事は、時間をかけて養生することと、赤ちゃんにお乳をあげることです。メスの若い鶏黄耆当帰といった薬草を合わせたスープは、産婦の回復を助けます。

 アグネス・チャンさんの話では、中国でお乳の出を良くして質を高めるのは、なんといってもトンソクです。日本では本格中華レストランか沖縄料理のお店に行っても楽しめます。日本の民間療法では、鯉や団子が勧められています。

 T市のTさんは、32歳の産婦です。お乳の張りが弱く、絞ってもタラタラとしか出ないので、赤ちゃんも疲れるのか吸い付いてくれなくなりました。一度も食べたことのない鯉こくを婚家の義母から勧められましたが、のどを通らなくて漢方相談においでになりました。

 舌の引き締まり方も弱く縁に歯の跡が付いています。気血の不足なので十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)を勧めました。一週間しておいでになりましたが、まだ不十分だとおっしゃいます。

 そこで、通草の出番です。通草をせんじて合わせて飲むあふれるほどお乳が出てきました。たくさんのお母さんがこれで助かっています。

通草(つうそう)ウコギ科カミヤツデの茎髄。炎症性の熱を下げて、いろいろな水分の流れを良くするので、膀胱炎に使われる。



玉米鬚(ぎょくべいしゅ)


 昨年、中国の河南省から河北省へ列車で5時間の旅をしたときのことです。車窓からは見渡す限りのトウモロコシ畑がひろがります。「こんなに食糧がとれているのに、中国も食糧を輸入する国になってしまったのか?」とか「このトウモロコシは、エフワンかな?」などと考えていましたが、もうひとつ、疑問が出てきました。「これだけの作物を手で収穫してロバに引かせて運んで、いったいいつになったら収穫作業が終わるのかな?」中国は不思議な国で、飽きさせてくれません。

 トウモロコシは、原産はマヤ文明のあたりといわれています。「とう」も「もろこし」も日本から見た中国のことです。中国では「小米(シャオミー)」が「アワ」、「大米(ダーミー)」が「うるち米」、「玉米(ユイミー)」が「トウモロコシ」、もうひとつおまけに「海米(ハイミー)」が「小エビの干したもの」です。

 メタボリックシンドロームが話題になっています。漢方では、精白された単純な穀物を食べるよりも、精白されていないいろいろな雑穀を食べる方が良いと考えています。最近は、普通のご飯を炊くときに混ぜるだけで雑穀ご飯が炊けるセットも注目されています。最近の中国の研究では、アワやヒエばかりでなくさまざまな豆類やトウモロコシを合わせることで、中性脂肪やコレステロール・尿酸値・血糖値が安定して、高血圧症・動脈硬化症が予防できて、脳梗塞・心筋梗塞の危険性を下げることができるとのことです。

 トウモロコシの鬚は、むくみや尿量減少に対して効果があります。特に脚のむくみに良いとされています。ただし、キササゲやカキドオシ・ヤーコン同様、カリウム塩を多く含んでいます。慢性腎炎の末期や透析をしている患者さんにはお勧めできません。

玉米鬚(ぎょくべいしゅ)イネ科トウモロコシの花柱と柱頭。日本では、通称「ナンバの毛」ですが、南蛮黍(なんばんきび)の毛からきていると思われる。



赤小豆(せきしょうず)


 三十年前に中国の漢方薬剤師の劉先生は、シルクロードを何ヶ月もかけて歩きました。昔から言い伝えられてきた食生活をする貧しい遊牧民たちのたくましさに驚いたといいます。

 先生は、肝炎や腎臓病赤小豆を使った処方を紹介しています。ある患者さんが重症の肝炎による腹水で、当時の中国でできる限りの西洋医学の治療がされましたが、効果が見られませんでした。窮余の策として、鯉と小豆と落花生とニンニクと唐辛子を入れたスープを試してみまると、七日間大量の排尿があって腹水が治まったというのです。

 こうお話しすると、どんなむくみや腹水にも赤小豆が効くように読まれてしまいそうです。しかし、私の考えでは、効果があるのは一定程度の病状のむくみや腹水までであって、基本的には予防的に使うものなのだろうと思います。

 患者さんのなかには、民間療法に関心をもっている人が少なからずいらっしゃいます。「キササゲを使えば、どんな糖尿病でも腎臓病でも治りますよね」と聞かれると、答えに困ってしまいます。アケビ・連銭草・トウモロコシの毛・ヤーコンなどはカリウム塩を多く含んでいます。重症の腎機能障害の患者さんやすでに透析を受けている患者さんには、カリウムやリンの制限が必要です。昔は民間療法で治らない人は手遅れとされていましたが、今は透析という技術ができたので、生き続けることができるようになりました。

 腎臓の専門医から、透析患者さんの手足の冷えや皮膚の乾きに対する漢方薬の相談を受けることがあります。そういう時は、かならずカリウムやリンなどのデータを参考にしながら、漢方薬を提案するようにしています。

赤小豆(せきしょうず)マメ科ツルアズキやアズキの成熟種子。むくみや黄疸を解消する。料理の時に茹でこぼす汁に効果がある。



閑話休題「がんばれ!仏教」


 先日、タイにあるスカトー寺(でら)の副住職、ナラテボー・プラユキさんのお話を聞きました。ナラテボーさんは、本庄出身の45歳の日本人で、20年前に現地で得度をいただいたタイのお坊さんです。

 ナラテボーさんによると、世界の仏教は大きく三つに分けられます。ひとつは、ダライラマ十四世率いるチベット密教、ひとつが日本や中国に伝わった大乗仏教、最後に、タイ・ミャンマー・スリランカに伝わる上座(小乗)仏教です。

 日本で、小乗仏教というと、民衆を置き去りにして修行僧だけが悟りにいたるというようなイメージがあります。ところが、実は「自灯明(じとうみょう)」といって、自らが発する光をよりどころにして、あらゆる悩みや苦しみから解放され安らげる意識の置き方を学ぶ、哲学のように感じました。

 現在、日本では、オーラや前世が見えるとかスピリチュアルの世界が騒がれています。その一方、適応不安やゆううつ感で悩んでいる人が大変増えています。わがままな夫が毎日家にいるので、いらいらして眠れない人もいます。学校に行こうとするとお腹が痛くなる人もいます。子どもさんを亡くして気持ちの整理がつかない人もいます。がんの治療は受けていますが、心の安定が得られない患者さんもいます。

 ナラテボーさんは、感情に振り回されない受容力を高める方法として、言葉からだけの悟りではなく、具体的な瞑想法を教えてくれました。まるで、仏陀というひとりの人間が洞察の末にたどり着いた、認知行動療法にも通じる心理療法を、教えてもらっているようでした。

 私のところに漢方相談においでになる患者さんの多くが、肉体の不調だけでなくこころの悩みや苦しみを訴えています。願わくば、日本のお寺でも、仏陀の智恵を教えて、物や金・地位などに執着しないこころのやすらぎを広めて欲しいと思いました。



乾姜(かんきょう)


 街にマスクをしている人を見かけるようになりました。花粉情報が天気予報の時に流れるのが、すっかり普通になってしまいました。花粉の量が多いと聞くだけで鼻がむずがゆくなります。クシャミが何度も出る人、下を向いていると知らないうちに鼻水が垂れてしまう人もいます。一方で、夜、鼻が詰まって眠りが浅く、喉が痛くなる人もいます。目が痒くて、目薬の手放せない人もいます。

 花粉症に一番多く使われている漢方薬は、なんといっても「小青龍湯」だろうと思います。街のドラッグストアーに山済みされている花粉症コーナーには、現代医学の薬に並んで、「眠くならない」などとして、漢方薬が小青龍湯を中心に所狭しと並んでいます。

 ところが、大変残念なことに、百人の花粉症の人が小青龍湯を試してみても、三割くらいしか効果が出ないだろうと、私は思っています。体質が違うからです。むしろ、それによって「やっぱり、漢方薬は効き目が悪い」などといわれかねないと心配してしまいます。

 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)という漢方薬に、お腹の周りの皮下脂肪や内臓脂肪を消し去って腹筋が浮き出す作用があるような、宣伝があります。体質を考慮しないその宣伝に、私は不快感を持ってしまいます。それは医療ではなくて、不安をあおって消費を進める商売でしかないと思うからです。薬草の無駄遣いのような気がします。

 乾姜は、小青龍湯に含まれている薬草です。乾姜の持つ熱の作用によって、寒さの邪気をはらい、くしゃみや透明な鼻水などの症状を緩和します。ところが、目の痒みや喉の痛み・夜の鼻詰まりや喉の痛みには、反って症状を悪化させかねません。
 かならず、近所の漢方薬に詳しい専門家に相談して服用するようにしてください。

乾姜(かんきょう)ショウガ科ショウガの根茎を乾燥したもの。胃腸の冷えからの痛みや下痢、冷えによるショックになどに用いる。



荷葉(かよう)


 土浦の患者さんから、年末にレンコンが送られてきました。正月はレンコン料理を堪能できました。黒豆が黒くなってマメに働けることを祈ったのと同じように、レンコンも穴から先が見通せるようになるという願いが込められていたといいます。どうも、わたしはレンコンの食べ方が足りないようです。

 群馬でも伊勢崎の近郊にはハス池があって、初夏には美しい花を咲かせます。以前誘われて行った埼玉県の行田にある「古代蓮の里」は、素晴らしかったです。仏教では、黒い泥から広い葉を広げて水をはじき、気高い白やピンクの花を咲かせるところに、俗世間の欲にまみれながらも清らかにいきる「仏のこころ」に通じるといいます。

 漢方では、おもに種を「蓮子(れんし)」「蓮肉(れんにく)」と呼び、胃腸虚弱からの慢性の下痢、精神不安からの動悸・不眠、虚弱体質の帯下に使われます。保険範囲では、啓脾湯(けいひとう)清心蓮子飲(せいしんれんしいん)に含まれています。

 今から二十年前の夏の西安でのことです。全身のむくみで患者さんが連れてこられました。もともとの胃腸虚弱でだるくて、食べても下痢をしてしまう二十歳代の女性です。六十歳代に見えるお父さんは、砂漠の砂を塗りつけたような三輪自転車の荷台に娘さんを乗せて二時間近くもかけて、近郊から出てきたというのです。

 医療費も払うのが大変そうな様子を見た馬(ま)先生は、「腎は問題なさそうだ。脾の問題だよ」と説明して、三日分の薬を出しました。帰り際に、蓮の葉を煎じて飲むように指導しました。二週間後にすっかりむくみのとれた娘さんがお父さんと交代で自転車をこいで来ました。先生の医と仁の高さをほめる手紙にアヒルの卵が添えられていました。

経済発展をする前の中国の話しです。

荷葉(かよう)スイレン科ハスの葉 暑気あたりによる頭張・頭重・尿が濃いのを治す他、慢性の下痢やむくみ・出血に用いる。



白扁豆(びゃくへんず)


 「先生、一生に一度でいいから、太ってみたいんです・・。」多くの人から言わせると、ぜいたくな悩みに聞こえますが、M市のOさん(63歳女性)にとっては、切実な悩みです。体力をつけようと少しでも量を多く食べると、お腹が張って苦しくなります。翌日には、お腹の痛みと下痢で苦しみます。いろいろな方法を試してみましたが、同じことのくり返しなので、結局、加減しながら食べているので、ちっとも太れずに冷えやすく疲れやすいです。ふくよかな友人と見比べると、いかにも年寄りじみてみすぼらしく見えるのが、何にもまして苦痛だとおっしゃいます。

 近隣の漢方に詳しい医師と相談しながら、まずは粉になっている「小建中湯(しょうけんちゅうとう)」を試しました。五日くらいはいいのですが、やはり、おなかの上のほうがむかつく感じです。六君子湯(りっくんしとう)を試すと、同じように一週間するとおなかの張りが気になります。そこで、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」を飲んでもらいましたが、思うようではありません。

 そこで、もう一度、舌の状態をよく見ました。すると、舌の色はやや赤みが強く、大きさはやや小さく表面のヌルヌルがはがれていました。これまで使っていた処方は、舌の大きさはやや大きめで表面が湿っている、脾気虚のときに使うものでした。日本で使われている処方はたいてい脾気虚のものばかりです。今は状態が変わって胃の陰虚になったので、これまでの処方では効果が出なかったのです。

 参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)は保険範囲ではないので、自費で「星火健脾散」を飲んでもらいました。6ヶ月すると体重は2キロしか増えませんが、体に力が付きましたと、うれしそうに挨拶に来てくれました。

白扁豆(びゃくへんず)マメ科フジマメの成熟種子。慢性の下痢ややせのほか、暑気に当たった下痢や舌の苔が厚い下痢にも効果がある。



馬歯■(ばしけん)


 去年一年は一反の畑を任されて、試行錯誤の毎日でした。ジャガイモや里芋はなんとか食べられるものが出来ましたが、オクラが溶けてしまった時はがっかりしました。今はホウレンソウとキャベツとブロッコリーが収穫を待っています。タマネギとそら豆とえんどう豆が春を待っています。

 そのホウレンソウの苗間に、肉厚の丸い葉の雑草が生えます。根が浅く細いので簡単に除草できますが、大きくなったら「金のなる木」になるのではないかと勘違いしてしまいそうです。そんな雑草といわれて邪魔にされているのが、スベリヒユという草で、細菌性の下痢に効果がある薬草なのです。

 中国にこんな昔話があります。昔の中国では、貧乏な家の娘はお金で買われて、働き手として連れて行かれます。その娘は、三人兄弟の末っ子の許嫁としてもらわれてきました。お決まりのパターンとして、姑からも兄嫁からもほとんど人間扱いといえないような酷い仕打ちをされていました。

 村に赤痢が流行りだすと、嫁も下痢を始めたので、畑にしつらえたかやぶきの小屋に寝泊りするように言われました。食べるものも無く、しかたなく付近に生えていた草を煮てひもじさをしのいでいました。しばらくすると下痢が止まり元気が出てきて、家に挨拶に行くと姑も兄嫁もすでに赤痢で死んでいました。

それ以降、馬の歯の形に似たヒユという意味で名前をつけて、近所の人に食べさせてたくさんの命を救ったとのことです。

 挿絵を描いて下さっている橋本先生は、雑草という言葉を使いません。人間よりも大先輩である植物がどんな恩恵を与えてくれるのかを、われわれがまだ気付かないだけだからだそうです。



馬歯■(ばしけん)スベリヒユ科スベリヒユの全体。熱をとりのぞき下痢を止める他、アトピー性皮膚炎などの熱性炎症も鎮めるとされている。



土茯苓(どぶくりょく)


 「漢方薬は、漢字ばかりで難しくないですか?」と、たびたび聞かれます。私にとっては、カタカナの現代医学の薬の名前の方が難しいです。カリクレインとカルナクリンの違いを覚えるのは大変ですが、漢字であればひとつひとつに意味があるので、たいてい想像がつきます。

 でも、中には似ているので、早とちりをしてしまうときもあります。柴胡銀柴胡は違う薬草です。黄連胡黄連も違う薬草です。茯苓土茯苓も違う薬草です。逆に、大黄には別名に将軍・錦紋などがあります。

 中国漢方の勉強を始めて3年後のことです。中国の西安の中医薬研究院で研修を受けていると、ジュクジュクした皮膚炎に使われる煎じ薬に土茯苓という薬草が入っていました。牛膝の野生種は土牛膝ですから、きっと茯苓の二級品なのだろうと思いながらノートにとりました。

 宿舎に戻って、通訳兼指導教官の呉燕萍(ウエンピン)先生がやってきて、その日の復習を手伝ってくれました。先ほどの患者さんの処方には、土茯苓だけでなく茯苓も書かれています。どうして重ねて茯苓が書かれているのか質問すると、先生は赤い縁のメガネを上げながら「自分で考えて・・・」と教えてくれません。

 しかたないので、薬物学の教科書を見ると、土茯苓は茯苓とはまったく別物であることがわかりました。日本では別名の山帰来(さんきらい)のほうが有名です。

 同じ西安で留学していた松橋和彦医師は、現在、北相木村へきち診療所で漢方診療を続けていますが、患者さんの20%が村外の人のようです。その中にはアトピー性皮膚炎で悩んでいる人も多くいます。先日も、見違えるように良くなった患者さんを見て、漢方薬の効果に感心する毎日です。



紫花地丁(しかじちょう)


 冬になってあぜ道の草も枯れました。この春、いく株か植えたスミレがいつ顔を出すか楽しみです。思わず「スミレの花咲く頃・・」と口すさんでしまいそうです。私はシャンソンでは、札幌の銀巴里(ぎんパリ)で歌っている堀ひろこさんの歌声が、鳥肌が立つほど好きです。

 紫花地丁は、オデキの炎症を抑えて毒を散らし痛みをとり血に含まれている熱をとるとされています。

 中国にこんな昔話があります。ある乞食のできものが腫れてひどい痛みに苦しんでいました。済生堂という薬屋に助けを求めると、乞食にただでやる薬はないと言って断られました。それを見ていた近所の人が、そんな人情が無いなら、済生堂なんて看板を出すなと言いました。済生堂の主人は、「そのできものを治せるのはうちだけだ。よそで治ったらうちの看板を壊していいよ」と言って、乞食を叩き出しました。

 途方に暮れた乞食は川の堤に座って、あまりの痛さにそこに生えていた紫色の花を付けた草を噛んでできものに当てました。すると不思議なことに痛みが和らぎました。乞食は当てるだけでなく、煎じても飲んでみました。しばらくしてすっかり良くなった乞食は、済生堂の看板を壊して、近所のできもので困っている人に薬草をただで分けてやりました。薬草に名前が無いので、鉤型の枝の先に紫色の花を付けるので、紫花地丁と名前を付けました。

 紫色の薬草にシコンがあります。こちらの花は白で根が紫色です。中国ではせんじ薬にも加えますが、日本では内服は一般的でなく、紫雲膏(しうんこう)という傷薬に含まれています。藍で染めた剣道着を着ているとけがをしないという話を聞いたことがあります。色による作用がありそうです。

冬来たりなば、春遠からじ

紫花地丁(しかじちょう)スミレ科ノジスミレなどの葉や根。赤みや腫れのあるフキデモノやニキビに用いられ、日本には五涼華というものに含まれて輸入されている。



桑葉(そうよう)


 「お茶の色は、何色ですか?」管理栄養士の幕内秀夫さんから突然質問されました。質問の意図がわからないまま「お茶の色は、緑色ですか?」と聞き返すと、とても残念そうに「お茶だから、茶色でしょう」と答えてくれました。

 フードアンドヘルス研究所の所長の幕内さんには、ベストセラーの「粗食のすすめ」を出版する前から、私の患者さんの食事指導をお願いしていました。最近の和食ブームは彼が火をつけたといって過言ではないでしょう。

 チャの木の葉っぱを緑のまま使うようになったのは室町時代らしく、公家や僧侶が眠気覚ましに、それまで頭をスッキリさせるための薬だったものを生活に取り入れたもの、とのことです。コーヒーやココアなども元は薬だったものを、嗜好品として取り入れたのだそうです。

 日本では、柿の葉茶やクコの葉茶・ヨモギ茶と並んで、桑の葉茶も簡単に手に入るお茶です。最近の研究によると、抗がん作用のほか、血糖を急激に上げない作用や血圧を安定させる働きなども確認されています。肥満解消にも効果があるとの説もあります。

 群馬県も急激に桑畑が少なくなりましたが、それでも郊外に行くと桑の木が青い葉を揺らしているのを見るチャンスはあります。ただ残念なことに、手入れをされていないので、往々としてアメリカシロヒトリの巣になってしまっていることもあります。ぜひ近所の休耕田などで桑の木を見かけたら、その持ち主と話をして葉っぱをもらいましょう。陰干しにして煎じて飲みます

 中国の漢方では肺と肝の熱をとるので、急性でも慢性でも乾いた咳に勧められ、イライラや目の充血にも効果があるとされています。

桑葉(そうよう)クワ科カラグワの葉。根の皮も乾いた咳によい。枝は関節痛に、実は貧血に良いとされている。霜にあたった葉は、特に咳に良いとされている。



五加皮(ごかひ)


 漢方薬は飲んで胃から吸収されて効果を発揮するだけではありません。「良薬、口に苦し」と言いますが、口で感じる反応も大事ですが、鼻で感じる反応はもっと大事と考えています。たとえば、歯磨き粉や鎮痛の塗り薬に、薄荷が含まれています。スッキリする匂いで、清潔になった感じがするのは皆さんが経験している通りです。

 五加皮の匂いは、漢方薬というよりデザートに近い匂いです。まとわりつく甘い匂いは、アイスクリームに付けられるバニラの匂いにとても似ています。

 患者さんには、なるべく冷たいものや日本に無いものは、口にしないように指導していますが、たまに楽しむのは気持ちの余裕を生みます。バニラに似た甘い匂いをかぐと、不思議に関節や筋肉にエネルギーが充電されるような気持ちがします。

 五加皮は、雨が降る前に関節が重だるくなり、特に下半身がむくんで動かしにくくなる場合に使われます。

 Y町のUさんは、鉄工所に勤める36歳の男性です。九州に低気圧が近づいただけでUさんの体は反応して、重だるくなって動かしにくくなります。体は冷えやすく、「鉄を扱っているから冷えるみたいです」などと言います。夕方には足がむくんでしまって、靴が脱ぎにくくなります。近所の医師から利尿剤をくり返し処方されています。漢方薬も五苓散(ごれいさん)を試しましたが効果を感じないとのことでした。舌の紅色が淡すぎて、水浸しです。

 そんな折、Uさんの会社の上司が中国の瀋陽(しんよう)に旅行に行くという話を聞きました。私は、信頼できる中国人の友人に頼んで、Uさんの上司が宿泊するホテルに「五加皮酒」を運んでもらいました。

 Uさんが、その薬酒を一ヶ月飲むと体の冷えが取れて、利尿剤の量を減らしてもむくみを感じなくなりました。薬酒がなくなると、五加皮の他、杜仲や牡丹皮・地黄などを焼酎につけて、自分で薬酒を作るようになりました。

 半年後に、おいでになったUさんは見違えるように自信に満ち溢れています。聞いてみると、冷えがとれたばかりか、夫婦仲を良くするような余裕が出来るようになったとのことでした。

五加皮(ごかひ)ウコギ科ウコギ・マンシュウウコギ・エゾウコギの根皮。バニラのような独特な香りがする。お酒に浸すとより効果が高くなる。



蒿本(こうほん)


 知人が「早起き・早寝運動」を展開しています。地球温暖化に対して、電気や原油をなるべく使わないためには、夜更かしの朝寝坊ではなく、早起きをして太陽の明るさや暖かさを生かす一方、夜遅くまで照明や暖房にエネルギーを消費しない生活をしようというものだといいます。世界の科学者で作る「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」による第四次総合報告書には、恐ろしいことが書いてあります。「どんなに二酸化炭素などの温暖化ガスを削減しても、あと二十年は気温の上昇は止められない」知人はそれならまず隗より始めよ、先頭で生活を変えていこうとしています。

 先頭といえば、蒿本は、いろいろな薬草と一緒に煎じると、その薬草の作用を頭のてっぺんに運ぶ作用があります。頭痛のときに、頭頂部に痛みを感じるときに、蒿本は無くてはならない薬草です。

 A市のKさんは、肩こりと頭痛に10年以上なやまされてきました。痛み止めを飲んでもなかなか治らないので、注射をしてもらってやっと治まるという調子です。「これまで飲んだことのある漢方薬です。」わたしはそのメモを見て驚きました。日本で処方されるエキス剤で、頭痛に効果がありそうなものはほとんど書かれてありました。

 困ったと思った私ですが、せんじ薬にすればなんとかなると考えました。中国には「患者さんの頭が痛いと、医者の頭も痛くなる」という言葉があって、体質によって血行を良くする薬草や気の流れを良くする薬草を混ぜたりします。そのうえで、痛む場所によって加える薬草を考えるのです。漢方に造詣の深い医師と相談して羌活勝湿湯(きょうかつしょうしつとう)を煎じて飲んでもらうことにしました。

 一ヶ月もしないうちに「まずい漢方薬を飲みたくないから言うわけじゃないけど、痛みが飲み始める前の半分以下になった」とKさんが言ってくれました。

蒿本(こうほん)セリ科のある種の植物の根茎。風邪の頭痛の場合でも慢性の頭痛の場合でも後頭部から頭頂部の頭痛に効果が期待できる。


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