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羌活(きょうかつ)


 「羌笛(きょうてき)なんぞもちいん、楊柳(ようりゅう)を怨(うら)むを・・」唐詩選にある、王之渙(おうしかん)による出塞(しゅっさい)の一節です。恩師の松本忠男先生は授業で、「街では手が付けられない荒くれ兵士たちが、かすかに聞こえてくる異民族の笛の音を聴いたとたん、家族との別れの辛さが急に胸に迫って来るんだよね」今でもわたしの心の中に、涸(か)れることのない中国へのロマンの泉を湧き続けさせています。

 秋が深まって陽が沈むのが早くなってくると、風の音さえ心なしか寂しくなってきます。それまで、おさまっていた関節の冷えと痛みが始まって辛い思いをする人も増えてきます。

 羌活は、冷えを伴った関節の痛みに、たいへん効果のある薬草です。膝や腰にも効果がありますが、特に背中から肩や頸(くび)にかけての急性のこりや痛みから慢性の痛みまで効果があります。葛根湯で効果がみられない場合でも効果が出る場合が多いです。

 T市に住んでいるNさんは、五十歳を少し過ぎた独身女性です。リウマチの診断を受けて、現代医学の痛み止めを処方されて、なんとか痛みをコントロールしています。病院で自分と同じ病気の患者さんが不自由そうに歩くのを見て、なんとかならないかと漢方薬の相談に来ました。

 はじめは、手の指先が冷えて手首に力が入らなくてジャムの瓶のフタが回せませんでした。桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)を勧めると効果がありましたので、冷えが災いしていると確認できました。しかし、単に冷えと痛みを抑えるだけでなく、漢方でいう五臓六腑の肝腎をおぎなう薬草の入っている大防風湯(だいぼうふうとう)を勧めると、全身の動きが軽くなって、沈みがちの気持ちも明るくなりました。

 寒さで気持ちがふさぎやすい患者さんに勧めたい薬草です。

羌活(きょうかつ)中国ではセリ科の植物を使い、日本の和羌活はウコギ科の植物を使っている。羌とは、四川省から北西の少数民族が住んでいる場所のこと。患部に熱がある場合は悪化させる可能性があるので、大量に使うべきでない。



黄■(おうごん)


 今でも咳やゼンソクの患者さんに効く漢方薬を選ぶのはそれほど得意ではありませんが、勉強を始めた頃は、本当に見当がつかなくて困っていました。

 ある日、M市のTさんがやってきました。前の戦争の時に大変な苦労をして引き上げてきましたが、それ以来、咳が止まらないというのです。漢方は魔法ではないのだから、そんな何十年も治らない咳をどうやって治すのかわかりませんでした。

 中国漢方の教科書では、実証と虚証に分けます。実証はさらに寒さや熱や湿気、虚証は温度変化に対する抵抗力が弱い「肺」・消化能力が弱く痰がからむ「脾」・免疫力が弱くくり返し風邪を引く「腎」などにわけるのが教科書にのっています。

 Tさんの咳き込みは激しく、黄色い粘った臭いのある痰が出ます。食欲はあまりなく、散歩などで外出して冷たい空気を吸っただけで、息苦しくなります。舌を見ると黄色い粘った苔が表面を覆っています。咳き込みで夜もよく眠れません。

 ちょうど群馬においでいただいていた陝西省の中医学院(現在の中医薬大学)の袁先生と、漢方に造詣の深い医師といっしょにTさんの咳の原因を考えました。内側に熱を帯びた痰のもとが潜んでいて、外からの冷たい空気によって刺激されて咳が出ると分析しました。そして、定喘湯(ていぜんとう)を試すことになりました。エフエドリンの基の麻黄(まおう)・カラスビシャクの半夏(はんげ)の他、ギンナン・紫蘇の種・フキノトウ・杏の種の中身・桑の根の皮・しょうゆの甘味成分の甘草のほか、コガネバナの根の黄■が含まれています。

 二週間もしないうちに、痰も咳も驚くほど楽になりました。魔法のようで驚きました。袁先生が便秘も治ったはずだというので、聞いてみるとその通りでした。肺と大腸は関係があって、その熱を冷ます黄■の働きだと説明を受けました。漢方の奥深さに圧倒されたできごとです。

黄■(おうごん)シソ科コガネバナの周りの皮を剥(は)いだ根。生だと呼吸器や腸の熱の他、炒(い)って白朮(びゃくじゅつ)と合わせると妊娠中の熱にも効果がある。

■→草冠+今



沙苑子(しゃえんし)


 20年前のバブル最盛期の話しです。東京の知人の紹介で、ある大学の教授が健康食品の会社を作るから、学術の立場からアドバイスをして欲しいと頼まれました。

 調べてみると、いろいろなことが分かってきました。昭和四十六年六月一日付け厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取り締まりについて」というところに、これは健康食品これは医薬品と細かく記載されています。たとえば、センナの茎食品ですが、果実・小葉・葉柄・葉軸医薬品です。桑の葉や花や実食品ですが、桑の根の皮医薬品です。ヘビやコイの胆嚢食品ですが、ウシやブタの胆嚢医薬品です。

オーストラリアのウシの内臓は中国人商人が握っているが、アフリカのウシの内臓は手に入れられるかもしれないから、アフリカに買い付けに行くことになりました。アフリカの広大な大地で、サンプルを買い付けている自分の姿を夢みました。

 そんな中で、沙苑子は日本では食品として扱われていますが、中国では飲みやすく効果の高い医薬品であることに気が付きました。モニターを募ってみると、加齢による体の冷えや頻尿の他、尿漏れ、さらには、目のかすみやめまい・視力減退にまで高い評価を得られました。

 O市のFさんは、五十歳の坂を越えたサラリーマンです。血圧は高く、髪は薄くなり、おなかが出て少し歩いても息切れがします。今の悩みは、尿漏れです。トイレから戻る途中、嫌な生暖かい感触を股間に感じて目をやると、ズボンににじみを発見します。老化を強く感じる瞬間だそうです。Fさんは一ヶ月の肛門括約筋のトレーニングと沙苑子を煎じてみました。にじみはパンツでとどまってズボンに現れることはなくなったとのことです。結局、東京での一攫(いっかく)千金の夢は潰(つい)えましたが、それでも、今のやりがいのある仕事が出来てやっぱり良かった思う今日この頃です。

沙苑子(しゃえんし)マメ科ゲンゲ属植物の成熟種子。



天門冬(てんもんどう)


 いつからか、テレビの健康番組で言われるようになった健康法のひとつに「一日に水を二リットル飲め」「夜寝る前に一杯の水を飲め」というものがあります。前者は、西式健康法でいわれていますが、肝心な少食を実行していない段階でそれだけをやったからといって、健康になるとは思えません。舌の引き締まり方が弱く苔がべっとりと付いている患者さんに聞くと、運動もしないで大量の水を飲み続けているケースが多いので驚きます。

 乾いたスポンジに水を含ませるのではないのですから、寝る前に飲んだ水がすぐに血液の粘貼(ねんちょう)度を下げるという理論は、にわかには信じがたいものがあります。むしろ、夜中にトイレに起きる回数を増やして睡眠不足や寒さによる脳血管や心臓機能に対するダメージの方が大きいと思うのは、私だけでしょうか?

 患者さんが口が乾くので舌の赤みを見てくれということがあります。中国漢方では、舌の紅色が濃く表面が乾燥している場合に、陰虚(体内の潤い成分が足りない状態)と考えます。程度が進行するとひび割れて、口内炎もひっきりなしにできて、患者さんを悩ませます。

 このようなときに、「陰陽のバランスがくずれて、陰が足りない状態です。体の中の水分が足りないです」。と説明すると、「じゃあ、今よりもっと水を飲めば治るんですか?」ときかれます。「そうではなく、口から入った水分を体内に引き込んで、必要な量を必要なところに保持する能力が低下しているのです。口から飲めば済むような簡単なものではありません」と答えるようにしています。毎日の生活であせらない・あわてない習慣が大切です。

 天門冬は、日本では滋陰降火湯(じいんこうかとう)に含まれ、保険適応になっています。

天門冬(てんもんどう)ユリ科クサスギカズラの塊根を湯通ししたのち外皮を去って乾燥したもの。糖尿病などにともなう痰の少ない咳・寝汗・便秘に使われる。



閑話休題


 先日、二十年前にお世話になった中国の古琴(秦琴)の先生を訪ねて、北京に行ってきました。通訳無しで二十分も話すと頭がオーバーヒートしてしまいます。明日は慕田峪(ぼでんよく)にある万里の長城に登るというと、別れに「姜女涙」という曲を演奏してくださいました。

 姜女とは、孟姜女(もうきょうじょ)の意味です。昔、結婚したばかりの夫婦のところに兵隊がやってきて、万里の長城を作るために夫を強制的に連れて行ってしまいました。冬になっても姜女の夫は帰ってきません。姜女は大変な苦労をして夫に着せようと冬の服を持って長城まで行きました。あちこちで夫の行方を聞くと、夫はすでに死んで墓もどこにあるかわからないということでした。姜女があてもなく長城に添ってさまよい、とうとう力尽きて倒れて三日三晩なき続けました。すると、空が急に曇って雷がなると突然石が崩れてそこから夫の遺体が現れたという話しです。

 きっと、先生は、景色の良い観光地に汗をかいて登って来るだけでなく、民衆がどんなに苦しい思いをしたかを思いやって欲しいという気持ちで演奏してくださったのだと思いました。

 帰りには、上海の友人と魯迅公園を散策しました。魯迅先生はすばらしい作品を残した有名な作家です。私は中国料理の中では特に上海料理が好きなので、北京でも孔乙己(コンイーチー)酒家に寄り、上海では咸亨(カンキョウ)酒家に寄りました。茴香豆は一皿六元(日本円で百円)です。これをさかなに杯を傾けていると、中国旅行で浮かれている私に魯迅先生が語りかけてくるような気がしました。

 漠然とした国という概念が一人歩きしやすいのは、競技スポーツで試合をするときです。ヒートアップすると、どうしても相手の国の短所をさがしてののしりあいをしかねません。しかし、中国人の友達が出来ると、人の意見に左右されずに、一人の人間としての信頼関係が作れます。「中国ではなんであんなまずい中華料理を出すんだろう」という日本人もいますが、それは、その人の好みに合わないだけであって、その土地ではその味が気候風土にあっているのだと思います。これからも人と人の理解と信頼関係を深めてゆきたいと思う旅でした。



莵絲子(としし)


 むかし、中国にある金持ちがいました。その金持ちは、たくさんの小作農をかかえて、年貢をとりたてていました。趣味といったら、たくさんのウサギを飼うことです。いろいろな種類のウサギをふところに抱いては、頭をなぜては「かわいい、かわいい」といっていました。しかし、えさをやったりフンの始末は、小作の仕事です。

 ある日、小作の男が畑仕事をしていると、そこにウサギが飛び出してきました。急のことだったので、小作の鍬(くわ)がウサギに当たってしまいました。地主が大切にしているウサギです。小作は、豆の畑にぐったりとしたそのウサギを隠しました。

 数日後、地主がウサギを捜しにやってきました。小作がヒヤヒヤしながら見ていると、前よりも元気になったウサギが豆の畑から飛び出してきました。

 小作が不思議に思って、今度はわざとウサギの腰を棒でたたいてから同じ畑に隠すと、また同じように元気になってしまいます。

 小作はその話を家に帰って父親に話しました。父親は、きっとその畑の中に秘密が隠されているから、もう一度その後の様子をよく観察するように言いつけました。案の定、豆の苗に巻きついている草を食べていると、ウサギの腰がしっかりするのが分かりました。父親はもう何年も前から、腰が痛くて立つこともままならなかったので、その草を摘んでこさせて、煎じて飲んでみました。するとみるみる痛みがとれて、しっかりと歩けるようになりました。

 うわさを聞いた近所の人が来ると、その草を分けてあげると、冷えが取れて腰がしゃんと伸びるようになりました。ウサギが教えてくれた蔓という意味で、莵絲子と名前をつけたそうです。

 中国では冷えによる下痢を止め、目のかすみをとって、精子の数を増やすといわれています。日本には至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)の中に含まれて輸入されています。

莵絲子(としし)ヒルガオ科マメダオシ・ネナシカズラの成熟種子。インポテンツの他に、頻尿や男性の排尿後の尿漏れにも勧められる。



玄参(げんじん)


 漢方の考え方は難しいようですが、ある面、自然や習慣の中からイメージできることがあります。

 日本の漢方によると冷えている場合「陰体質」といい、体温が充実している場合「陽体質」といわれます。つまり、熱という一つのものさしで多いか少ないかを言っています。しかし、中国の漢方よると慢性的に冷えている場合、温める力(陽)が足りない(虚)という事で「陽虚」といい、慢性的に熱がある場合に、冷(さ)ます力(陰)が足りない(虚)という事で「陰虚」というように、二つのものさしの多少を表現しています。

 陰虚を昔から伝わっている表現でいうと、同じ火力でもお鍋に水がたっぷりあるのと少ししかないのでは、少ししかない方が熱くなりやすい状態に例えられます。火力が「陽」で水の量が「陰」です。車でいうと、エンジンの熱が「陽」でラジエターの水が「陰」です。陰陽のバランスがとれて、はじめて健康だという考え方です。

 漢方に「潮熱(ちょうねつ)」という症状があります。昼間はなんとも無いのに夕方になると不思議に微熱が出て、夜が明けるころには潮が引くように収まるところから、この名前が付きました。過労から「陰」を消耗するとこのような症状が出る場合があります。舌の色は濃い紅(あか)で、小さくひからびたようで、表面の潤いがはがれて、場合によっては旱魃(かんばつ)の田んぼのようにひび割れています。このようなときにせきや喉枯れがおきます。玄参を含む養陰清肺湯(よういんせいはいとう)を勧めます。不眠・イライラが起きる場合に玄参を含む天王補心丹(てんおうほしんたん)を勧めます。

 アトピーで乾いて熱がある場合に、せんじ薬に合わせることがあります。S市のK君は厚くなった皮膚に熱があって辛かったですが、玄参を合わせるようになってから、楽になって喜んでいます。

玄参(げんじん)ゴマノハグサ科の同属の植物の根。過労による手足のほてりをとるほか、便が乾いて出にくいときにも、刺激の少ない便秘薬として使われる。



茯神(ぶくしん)


 「3車線の幹線道路の真ん中の車線を走っていて、信号待ちをしました。前後左右を全部ふさがれたと感じたとたん、言葉にできない恐怖感が全身を覆い、運転席から逃げ出したくなってしまいました。それ以来、広い道を運転できずに、右折車線にも入れません。漢方薬で神経を太くできませんか?」

 エレベーターに乗れないとか、窓の開かない新幹線に乗ると息が詰まりそうになるとか、手が汚れてしまった気がして30分洗面所から出て来れないとか、いろいろな悩みを持っておいでになる人がいます。きっと、学校に行こうとすると頭やおなかが痛くなるとか、教室にいると息がせわしなるとかお腹が鳴るなども、同じ原因なのだろうと思います。

 かつて、不安神経症とか強迫神経症といわれ、最近は、パニック障害とか適応障害といわれる傾向にとらえることができると思います。漢方で魔法のように治るわけではありませんが、治りやすい体質に変えることはできます。治すのは本人です。ストレスに弱い性格特徴を少しずつ成長し直すのを手伝うカウンセリングを受けるのは、とても大切なことだと思います。

 茯神は、精神安定の働きがあります。胃腸の働きを整える以外に、不眠・驚きやすい・動悸・不安・健忘に効果があります。帰脾湯(きひとう)は、過ぎ去ったことをクヨクヨ思い悩んだり、まだ来ないことをハラハラ心配したりする人で、舌の色が淡く引き締まり方が弱い人に使います。

 目の前に無いことに頭を悩ますと胃腸の働きが低下して、気力を蓄えることもできません。広い道が運転できにくくなった患者さんには、「不安は車のブレーキ。アクセルばかりでは事故になる。」などと説明して、半年で安全運転が出来るようになりました。

茯神(ぶくしん)サルノコシカケ科マツホドの菌核で、松の根を抱く部分。値段が高いので茯苓で代用することが多い。



地楡(ちゆ)


 仕事や家庭に追われるように暮らしているのに、そろそろ余裕を持ちたいものだと、山歩きを始めました。前橋に生まれていながら、尾瀬を訪れるチャンスになかなか恵まれませんでしたが、ようやく行くことが出来ました。水芭蕉には遅い時期でしたが、木道の広くなっているところには、高山植物を撮影しようとカメラマンが構えていました。

 黙々と足元から目をはずさず息を切らして歩きます。時には立ち止まって回りに目を移します。みどりの中にひっそりと咲いている高山植物は、疲れを快く癒してくれて、おもわず顔にほほえみが浮びます。キスゲやワタスゲにならんで、有名なのがワレモコウです。日本の漢字で書くと「吾亦紅」という可憐な花は、ひときわ目を引きます。

 地楡は、ワレモコウの根です。現代医学でいう炎症性の出血を止める働きが期待できます。

 漢方では血管から血液が漏れる原因にはいくつかあると考えています。舌の引き締まり方が弱い場合、脾の気が足りないとして「帰脾湯(きひとう)」を勧めます。舌の色が赤みが強かったり先に赤い点があったりする場合、血(けつ)に熱の邪気が入っていると判断します。地楡は、熱の邪気を清めて出血を抑える働きがあります。

 鼻血が止まりにくいときや血尿には、蓮の節などと一緒に煎じます。ぢ出血や肛門の腫れにはエンジュの実(槐角=かいかく)などと合わせた槐角丸がお勧めです。

 T市のYさんは47歳の女性です。出産後、ぢになっていろいろ治療を試みましたがうまく行きません。便が硬くても軟らかすぎても肛門が切れて出血してしまいます。槐角丸を試してみると10日もしないうちに出血することがなくなりました。

地楡(ちゆ)バラ科ワレモコウの地下部。出血を止めるだけでなく、腫れを消し痛みを止め、皮膚粘膜を丈夫にする働きもある。



麦芽(ばくが)


 日本の街を歩いていると、ケッチャップのにおいや焼肉屋のにおいが漂ってきます。昔のお茶屋さんがお茶の葉を焙じるにおいがすると、とてもうれしいです。もうひとつのうれしいにおいに、麦芽を炒るにおいがあります。香ばしくて、思わずお腹が空いてしまいます。

 日本では食べ物として扱われても、中国では薬食として扱われているものの典型が、この麦芽です。おもに米や麦や芋の食べ過ぎでお腹が空きにくいときに、炒って煎じて使います。米や麦や芋の食べ過ぎでお腹が張ってしまっているときは、「莱?子(らいふくし)」(ダイコンの種)を炒って煎じます。

 教室でおなかが張って鳴ったりガスが出たりするのがいやで、学校に行きにくくなってしまったNさんは高校2年生の女の子です。朝ごはんを食べないでみたり、コーンフレークにしてみたりいろいろ試しましたがうまく行きません。小児心理を専門にしているお医者さんにかかりました。ドグマチールというお薬を出してもらって、一時良くなりましたが、お乳が出たり生理が止まったりしてやめてしまいました。

 ドグマチールは、もともと胃腸の薬として開発されましたが、副作用に気分を明るくする効果もあることがわかって、精神科の薬に使われるようになったと聞いています。実際、飲んでいる患者さんには良い効果が見られます。しかし、生理が止まるなどの副作用でやめざるを得ないケースもあります。

 炒った麦芽を煎じて飲んでもらうと、胃腸の働きも落ち着いてガスが気にならなくなり、生理も戻りました。私は、炒った麦芽は、漢方のドグマチールだとひとりで勝手に思っています。

 中国では、プロラクチンというホルモンの数値が高くて妊娠しにくい患者さんに処方されて、効果を上げています。

麦芽(ばくが)イネ科オオムギの発芽させたモミ。消化を進めるには炒って、ストレスを発散したりお乳の出を止めるには乾かしただけのものの方が効果ある。



木瓜(もっか)


 日本人が中国人と会話をするときに、漢字が共通なので、よく筆談をすることがあります。通じる面白さはありますが、時にはおかしな誤解を生じることもあります。中国語で「手紙」は日本語の「トイレットペーパー」であることを知っている人は多いと思います。中国語で「鴨」は日本語の「あひる」を意味します。日本語の「鴨」は中国語で「野鴨」です。日本語の「必勝 前商」の旗の下には、前商と戦う側の応援団がいると思うのが中国語での理解です。

 日本語で「木瓜」といったときに、思い浮かべるのが、「カリン」です。香りが良いので、部屋に置いたりします。また、焼酎に漬けたり、お酒に弱い人や子供にははちみつ漬けが、たんきり・咳止めのほかに、滋養強壮・整腸に用いられています。

 中国で「木瓜」と書くと、ボケの実をいいます。もともと貧血体質で舌の色や爪の下の赤みが足りない人が、急かされたりイライラしたりしたときに、筋肉が痙攣するときがあります。そういうときに、四物湯(しもつとう)と合わせて使います。また、蒸し暑い夏に、胃腸虚弱で水分の代謝が弱いところに水分をとりすぎると、むかつきや下痢をおこし、筋肉の痙攣を起こすことがあります。そのようなときに、?香正気散(かっこうしょうきさん)と合わせて使います。 

 M町のNちゃんは、小学校5年生の男の子です。ちょっとひ弱な感じの彼は、宿題などをするときに、元気のちょっと良すぎるお母さんからせかされると、目の下がピクピクしたり手が震えたりします。お母さんからそのことをからかわれると目の下のピクツキや震えはよけい大きくなります。Nちゃんには、それを治すのは薬にまかせて、楽しい旅行の計画を立てることを勧めました。お母さんがからかわなくなったからか、木瓜の効果か、まもなくNちゃんのピクピクは納まりました。

木瓜(モッカ)バラ科ボケの成熟果実。中国では宣木瓜、もしくは陳木瓜という。日本でいう木瓜は、光皮木瓜という。



丁香(ちょうこう)


 私にとって中国旅行の入り口は、地方都市の空港に着いたときに押し寄せる香辛料のにおいです。街角のマーケットに並ぶ軽食屋から立ち上る五香粉(ごこうふん)の香りは異国情緒を呼び覚まします。淡白な日本人には、きつすぎるにおいかもしれませんが、動物の肉の臭みをとるには、その土地では必要なものです。

 丁香は、インドネシア原産の植物の花のつぼみです。料理では、丁字(ちょうじ)といったり、クローブといったりします。15世紀のヨーロッパでは、肉を食べるのにこういった香辛料を陸路でのイスラム商人を経由せずに直接手に入れようと、大航海時代を迎えました。その結果、南北アメリカ・アフリカ・オセアニアを植民地にしたのですから、はかりしれない原動力になったのでしょう。

 中国漢方では、数千年前から殺菌・消毒薬として使われ、現在では漢方でいう脾(胃腸)や腎を温め痛みをとるときに使います。

 ある病院のお医者さんから電話を受けました。話を聞いてみると、腸閉塞の手術後の患者さんがしゃっくりが止まらなくて苦しんでいる。現代医学的に出来る手は全て打ったのだが、もう二週間も昼となく夜となくしゃっくりが止まらないので、漢方で柿のヘタが効果があると聞いて煎じて飲ませたが効果がみられない、なんとかならないかとの話でした。

 漢方では、しゃっくりに限らず頭痛でも下痢でも、かならず体質の違いによって選ぶ薬が変わります。陰陽虚実表裏寒熱の八項目はその基本です。病院に行って主治医の立会いの下、患者さんの舌を見ると赤みが足りない青白い状態でした。丁香と生姜を加えてもう一度飲んでもらうと、一時間もしないうちにしゃっくりが収まりました。

丁香(ちょうこう)フトモモ科チョウジノキの花蕾。冷えによる嘔吐やそけいヘルニアの痛み・男女の性器の冷えに用いられる。



太子参(たいしじん)


 中国語を勉強していくなかで、四字熟語を覚えると、お年寄りの中国人に受けが良いことがわかりました。「抜苗助長(バァミャオジュジャン)」には物語があります。

 昔、ある男が田植えを終えてしばらくしたある日のことです。隣の田んぼの苗の背が自分の田んぼよりも伸びているように見えました。悔しくなった男は、朝早く田んぼに出かけて夜暗くなるまで、一日かけて自分の田んぼの苗を少しずつ上に引き上げて隣の田んぼの苗よりも背を高くしました。

 夜、家に帰ると、女房に「今日は一日掛けて苗を伸ばしてきた」と威張りました。女房は、それを聞いてめまいがして寝込んでしまいました。

 よく朝早く、女房に引っ張られるように田んぼに行ってみると、案の定、苗はひとつ残らず浮いていました。

 このような話は、日常でもよくある話しです。毎日、仕事で忙しく働いて疲れ切っている人がいます。この場合、皆さんならどのように対応しますか?たいていの人が、元気の出る漢方薬を飲ませると思います。しかし、どうでしょうか。疲れたら休むのが当然であって、無理をするために漢方薬はあるのではありません。

 太子参は、疲労倦怠感・食欲不振・口渇などに使われる薬草です。しかし、その作用は朝鮮人参の十分の一にも届きません。朝鮮人参は飲めば薬が効いて、あたかも元気になったように働けます。しかし、それは疲れ切ったロバにムチを打つようなものです。むしろ、太子参のような弱い薬で体力の回復を待つか、朝鮮人参は、そのエネルギーを内側に蓄える働きの麦門冬や五味子を合わせて使うのをお勧めします。日本には「麦味参(ばくみさん)」という名前で輸入されています。

太子参(たいしじん)ナデシコ科ワダソウの塊根。別名に孩児参・童参がある。古典には遼東人参の小さいものとされていたが、現在はこちらを示している。



党参(とうじん)


 中国漢方では、「参」という字が付く薬草がいくつかあります。一番知られているのは人参です。中国では、吉林(キツリン)人参を指します。漢方でいう「気」を高めるので、交感神経を興奮させて、脈拍や血圧を高めたりして体温も上昇させます。日本の長野で採れる和人参の作用は温和で日本人向けです。同じウコギ科の田七人参は、雲南省で採れます。血の滞りを取り除いて出血を止めて痛みを鎮めるので、肝硬変などのときに使います。さらに同じウコギ科のアメリカニンジンは、コロンブスが紹介する前からアメリカ大陸に生活していた原住民が使っていた、喉の渇きを鎮めて活力を出す働きがあります。沙参(シャジン)はセリ科の植物で喉や口の渇きに使われ、玄参(ゲンジン)はゴマノハグサ科で、身体の内側が蒸されるように夕方ほてる「骨蒸潮熱(こつじょうちょうねつ)」に使います。

 党参は、胃腸の働きを高めて食欲を出して、疲れやすさやだるさを取り除き軟便を正常化させる働きがあります。

 中国西安で研修をするなかで、よく使われる処方に「四君子湯(しくんしとう)」がありました。日本では四君子湯にはニンジンを使いますが、中国では党参を使います。張さんという36歳の女性が病院に来ました。痩せてだるそうにしています。食べたくても普通の量が食べられなくて、泥のような便が出るとのことでした。舌を見ると色が淡く引き締まり方が弱く、苔は薄い状態でした。四君子湯にハトムギや蓮の種を入れた処方を提案すると、担当教官から合格の返事がありました。3週間後に精気の戻った顔の張さんが来て安心しました。

 日本で食欲を出す漢方というと肥るのではないかと心配します。漢方ではむしろ、体力をつけると考えて良いと思います。

党参(とうじん)キキョウ科ヒカゲノツルニンジンの根。1757年の「本草従新」以前はニンジンの一部に収録されていた。中国では現在、古典にあるニンジンはほとんど党参を代用する。



竹葉(ちくよう)


 「井上さん、クマザザは、イネ科の植物だけど、属名はラテン名でなんていうか知っているかい?」沼田・玉原のブナ林にあるクマザサをわけて歩いていると、このコラムの挿絵を書いてくださっている橋本竹二郎先生が話しかけました。私が答えに窮していると、先生は、「私の名前の竹と同じイネ科だけど、竹は中国からの渡来の植物でラテン名にバンブーが付くことが多い、笹は日本原産のものが多く、日本語がそのまま使われてクマザサはササ属に含まれて、sasaと書かれているんだよ」。と教えてくれました。

 には、殺菌作用があり、手作りの味噌を作るときに表面を覆うと、カビが生えにくいといいます。「笹の葉サラサラ・・」という歌がありますが、血液サラサラにするという効果もあると注目されています。

 竹は筍(たけのこ)が竹になると、時には一日に一メートル近く伸びるとも言われます。七夕を始め地鎮祭や門松にも使われ、私の好きな村田英雄さんの歌「無法松の一生」の度胸千両入りにも「山車の竹笹」として出てきます。

 中国医学では、竹葉は五臓六腑でいう心と肺の熱を取るとされています。高熱が出たときに(日本では手に入りませんが)清営湯(せいえいとう)には、サイの角と一緒に含まれて使われています。発熱をともなう風邪の時には、銀翹散(ぎんぎょうさん)に含まれています。高熱が続いて口の渇きが強いときには竹葉石膏湯(ちくようせっこうとう)に含まれています。

 夏の夜には、うちわを使うことが多いです。不思議なもので、プラスチックの骨でできたうちわだと風が生暖かく感じるのに対して、竹の骨でできたうちわだと風が涼しくキレがあるように感じるのは、私だけでしょうか?

竹葉(ちくよう)イネ科ハチクの葉。竹葉の幼葉で開いていないものを竹葉巻心といいイライラに、笹の葉を淡竹葉といい泌尿器の熱性疾患に用いる。



黄柏(おうばく)


 「井上さんは、どんなきっかけで漢方の道に入ったんですか?」と、ときどき聞かれます。そのたびに、話す出来事があります。

 もともと、食べ物や運動で予防と治療が可能な疾患は、数多くあると思っていながら、順調な薬学生生活を送っていた私に、衝撃的な出会いがありました。それは、スモン病の患者さんとの出会いです。

 下痢を治してもらおうと医者にかかりました。医者は治そうと思って薬の名前を処方せんに書きます。薬剤師は間違えなくその薬を準備して、「下痢に効くお薬です。忘れずにお飲みください」と渡します。しかし、その薬で、何人もの患者さんの脚を奪い目を奪ってしまった事実があります。

 私の全くうかがい知れない所で、薬としてのデーターが作られ承認され、医療現場で流通するその恐ろしさに立ちすくみました。「この悲劇は繰り返さないはずがない」と思いました。それで、より漢方に傾倒して行ったのです。

 黄柏はもともと、樹の皮をはぐと内側が黄色いので名付けられたといわれています。関東では木曽御嶽(きそおんたけ)の「お百草(ひゃくそう)」、関西では奈良大峯(おおみね)の「陀羅尼助(だらにすけ)」として、昔から下痢や腹痛・発熱・打撲に使われてきました。ベルベリンという成分が効くとされています。キノホルムが使われる前には、これがゲンノショウコと並んで使われてきました。漢方では黄連解毒湯(おうれんげどくとう)などに含まれています。

 口内炎がくり返し出来て困っていたSさんは黄連解毒湯を飲んで、「話さなかったイライラ・焦燥感も治りました」。と不思議な顔をしていました。

黄柏(おうばく)ミカン科キハダの周皮を除いた樹皮。夏に足の裏がほてる・便が粘って便器を汚す・舌に黄色い粘った苔が付く場合に用いる。




秦■(じんぎょう)


 薬草に匂いは、さまざまです。ベニバナは少量だと良い薫(かお)りですが、量が多かったり湿気が多いと、沢庵(たくわん)のくさったような臭いになります。薄荷(はっか)紫蘇(しそ)も独特の香りで、素人の人でもすぐにわかります。

 秦■は、いなかの暗い納屋の奥の匂いがします。人間にとって、眼で見るものや耳で聞く音よりも、鼻で嗅ぐ匂いの方がはるかに印象に深いという説があります。私は小学校一年生の夏を大胡の農家で過ごさせてもらいました。川を堰き止めて水浴びをした記憶や見渡す限りの桑畑と青い空や白い雲は脳の部分で記憶していますが、納屋の匂いは身体全体で覚えている気がします。

 秦■は、膝や肩の関節の痛みや筋肉のひきつれによく使う薬草です。特に梅雨時に冷たい雨が降るととたんに重くて痛くて芯が冷える感じのときには、ハトムギと合わせて煎じるとより効果的です。

 膝や肩がさわると熱感があり、見ても赤みがあり冷やすと楽になる場合は、熱があると判断して、忍冬藤などと合わせて煎じると腫れや熱が収まって楽になります。

 関節に痛みを抱えている人にとっては、梅雨時の冷えや湿気は悪化の原因になります。漢方の考え方で、胃腸や関節に水のよどみが発生しないように辛いものを食べて、飲んだ水が汗となって発散できるように工夫していました。中国の四川料理が辛いのはそのための工夫といえます。

 現在は、摂る水分に問題があって水のよどみを作ってしまう傾向があるように見受けられます。氷を浮かべた甘い飲み物やアイスクリームのような脂肪分が豊富なものは、たまに楽しむようにしたいものです。普段飲む水分は、懐かしい匂いのする、熱い煮出した麦茶かほうじ茶なら水のよどみを作りません。



秦■(じんぎょう)リンドウ科リンドウ属植物の根。同属の地下部の細い根をリュウタンとしているが、こちらは太くて辛い味がする。

草冠+九



天花粉(てんかふん)


 子供の頃に近所の床屋に行くと、坊ちゃん刈りにされて、おまけに首のまわりに白い粉を付けられました。友達に見られてはやしたてられるのがイヤで、隠れるように帰ったのを思い出します。当時の年寄りは「てんかふん」と言っていましたが、カタカナで「ベビーパウダー」と言う方がかっこ良い印象がありました。あの白い首と化粧品の匂いが気恥ずかしかった記憶があります。

 天花粉は、キカラスウリの根です。最近の研究では、血糖値を急激に上昇させないでんぷん質なので、糖尿病の患者さんに副食として勧められるとの発表がありました。もともと、漢方でいう胃や肺を潤す働きがあるので、風邪や糖尿病のときの舌の苔がはがれて表面が紅く乾いていた口の渇きの他、加齢のためといわれている萎縮性胃炎にともなう口の渇き、痰のからまない咳にも中国ではなくてはならない薬草です。

 さらに、皮膚炎で膿を持つ状態のときに、腫れを鎮めて膿を排出する効果もあるといわれています。

 難病のシェーグレンで困っていたTさんは58歳の女性です。お話をうかがおうと椅子を勧めると深々と頭を下げられるので、ついこちらも頭を下げてしまいます。眼の乾きの他に、口の渇きはTさんの気持ちを辛くさせます。専門医から勧められる方法で満足行かず、漢方に可能性を求めて相談においでになりました。

 近所の漢方に理解のある医師と相談して、清暑益気湯(せいしょえっきとう)という煎じの処方に天花粉を加えて飲んでみました。2週間後においでになったときに、いつもより頭を下げている時間が長く感じました。こんなに楽になるのだったら、もっと早く漢方に出会えれば良かったと喜んでくれました。

天花粉(てんかふん)ウリ科キカラスウリの肥大根の外皮を除いたもの。日本ではカロコンとして保険適応になっている。中国では花粉と書かれることもある。



独活(どっかつ)


 漢方薬の材料には、桔梗の根・芍薬の根・牡丹の根など身近なものから、ショウガやハトムギ・クズなど食品として使われているものもあります。

 独活は、ウドの根です。昔から、みかけは立派でも「役に立たないこと」を「うどの大木」と言ったりします。このウドの根はなかなかどうして、立派な薬効が認められています。

 漢方では、■風勝湿・止痛と表現されています。風のように体内に侵入して関節に痛みを起こす邪気を取り除き、冷えをともなった湿気による腰から下の痛みやだるさ・脚のしびれなどを改善するという意味です。

 独活は、独活寄生湯(どっかつきせいとう)大防風湯(だいぼうふうとう)などにニッキや無毒化したトリカブトとともに含まれています。これらは患部に熱がある患者さんにはお勧めできません。日本にはニッキやトリカブト強く温める成分を加えていない「独歩丸(どっぽがん)」が輸入されています。患部に強い冷えがなく、舌の色の赤みが薄くなければ、独歩丸を勧めます。

 G町のKさんは、もう7年前から半身不随の夫を介護しています。本人も努力していますが、ほとんど寝たきりの状態で、食事も介助なくしては出来ません。特に、夜に排便があると、ひとりで介護するKさんの肩や腰の痛みは限界を越えてしまいます。

 Kさんの舌は、赤みが強く表面のネルネルがはがれています。人一倍暑がりで、夫の身体を拭いてあげると、全身汗だくになってしまいます。独歩丸を勧めると、一ヶ月もすると汗かきと肩や腰の痛みが半分以下になりました。

 介護保険があっても、自宅で介護を続ける現状は想像を絶する状況です。日本には、物はたくさんあります。しかし、こころのさみしい老後が不安なのは私だけでしょうか?

独活(どっかつ)セリ科シシウドの根を香独活、ウコギ科ウドの根を九眼独活という。なかなかとれない根の深い痛みをとる。

■→示+去



菖蒲(しょうぶ)


 先日、新潟の友人に会ってきました。山から出て行った私を歓迎してくれて、地元で取れる魚ということで、のどぐろという魚を焼いてくれました。とろっとした魚身とさっぱりとした新潟の地酒で心なごむ時間を過ごさせていただきました。

 話の中で、冬なのに夏しかいないはずの魚が捕れたり、北の笹川流れが赤潮のようなプランクトンに汚されてしまっている話を聞きました。

 そのなかで、雛人形や五月人形の行事が、旧暦で行われていることを知りました。群馬ではお盆を新暦でしないのと同じで、桃の花が咲いてお雛さまを飾り、菖蒲の花が咲いてよろいかぶとを出すのだそうです。節句というのだから、季節の節目を野山の雪解けに合わせるのが自然なのでしょう。

 漢方薬としての菖蒲「芳香開竅(ほうこうかいきょう)、逐痰■濁」という作用を持っています。芳しい香りで身体の九つの穴の窓を開き、気の流れを整えて、体内の水の流れを整えてよどみを取り除くというのです。九つの穴とは、耳と目と鼻と口や肛門などです。

 中国では、舌に厚い苔がついている、統合失調症やてんかんの患者さんに用いられます。

 A市のA子さんは、27歳の女性です。てんかんの発作を多いときは一日に2回起こしていました。舌の奥には厚い黄色い苔がついています。菖蒲の根と竹の葉をお茶のように飲んでもらいました。6ヶ月すると、それまでの激しい転倒するような大発作の回数がはっきりと減り、動きが止まってうつろになる症状がでる程度になりました。

 菖蒲は尚武に通じて、端午(たんご)の節句には欠かせません。剣のようなその葉が、粘った水のよどみを取り除いてくれたような気がしました。

菖蒲(しょうぶ)サトイモ科セキショウの根茎。日本でいう菖蒲を中国では水菖蒲と区別している。舌に厚い苔があれば痴呆症にも効果が期待できる。

■→示+去


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