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夏に弱くて困っています。

Q:毎年、夏に弱くて困っています。やっと夏が越せたかと思うと、こんどは夏の疲れが出て、だるくて・朝が起きられなくて・食欲が無くて・眠りが浅くて・便が軟らかかったり硬かったり毎日は出なくなります。下半身はむくんでいるのに、目の下にクマができます。なにか良い漢方はありますか?(大胡町 Y江)


A:地球規模で温暖化が叫ばれています。都会では、一晩中クーラーをつけなければ寝られない状態が続いています。つい冷たい飲み物に手が出ます。夏ばてのひどい場合は立ちくらみまでする人もいます。

 夏ばての原因は暑さですが、日本の場合、特に湿度の高いことが特徴です。私は中国の西安で漢方の勉強をさせてもらいましたが、40度になっても日陰に入ると湿度が低いために爽やかで、夏のエネルギーが体に入ってくる感じがしました。日本ではじっとりと汗が体にまとわりついて、重だるい感じです。可能であれば、林の木陰で休むのが一番です。

 二番目に問題なのは、クーラーによる冷やしすぎです。省エネという意味では28度と言われています。ところが、自律神経の安定から考えれば外気温と5度以上の差があり、繰り返し出入りがあるとその自律神経の混乱が生じるといわれています。外気温より2度程度低くして、扇風機で風を回してあげるのが、健康にも省エネにもつながると思います。夏は暑いものです。汗をかくのが自然なのです。

 三番目に問題なのが、冷たい飲み物のとり過ぎです。ヒトは46万年前に火を使うようになって、食べ物に火を通して食べ、お湯を飲む習慣が出来ました。40年前に冷蔵庫やクーラーが普及して、冷たいものを口にするようになりました。しかし、人間のからだはそう簡単に冷たいものを受け入れられません。当然、消化吸収が低下して、口から入る糖分などは栄養過多でも体内に吸収できずに栄養不足になってしまいます。氷の浮いているような飲み物は、いくら飲んでも口の渇きが取れません。暖かい飲み物をお勧めします。

 四番目に問題なのが、不規則な生活です。食事の時間はなるべく一定にしましょう。胃腸が安定して働いてくれるためには、決まった時間に食べ物をとる必要があります。食欲があまり無くても少量をとるほうが回復しやすいようです。睡眠については、夏ばて解消の切り札ともいえるくらい大事です。とにかく早く寝るようにしましょう。12時過ぎに寝るなどというのはもってのほかです。10時を過ぎたら寝る準備で、10時半には眠りにつけるようにしましょう。

 五番目に問題なのが、汗をかかない生活です。住んでいる場所が夏の「気」に包まれているのに、クーラーで人工的な涼しい空間を作っても、からだの中の時計は夏です。その大きなギャップと、人間だって動物なのに少しの時間も歩かない運動不足で、体全体の循環から代謝まで、おどろくほど低下しています。早寝をした分、涼しい朝に散歩をして汗をかくように心がけましょう。

 漢方で、第一選択は「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」ですが、せんじ薬しか保険適応にはなりません。保険適応のエキス剤だと「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」を半量加える方法があります。

 いずれにしましても、薬さえ飲めば治るという考えはやめましょう。生活を変えなければ薬も本当の効果を発揮できません。そういう意味では、夏ばては生活習慣病といって良いでしょう。


漢方で熱中症予防の方法は?

Q:うちの高校生の息子は、部活でバトミントンをしています。一日に3枚も4枚もシャツからパンツまでびっしょりになります。私は、病院の調理室で働いていますが、湿気がひどく息苦しくなることもあります。去年、家で留守番をしていた高齢者が熱中症で亡くなったニュースを見ました。うちにも年寄りがいるので心配です。漢方で熱中症予防の方法はありますか?(宮城 T子)


A:バトミントンは、瞬発力を要求されるスポーツです。風は公平さを失うことからカーテンをした体育館で練習を行います。卓球なども同じで、そうそう冷房の効いているところはありませんから、蒸し風呂のようでしょう。炎天下で行われるラグビーや野球の方がかえって熱中症に注意が向きます。ご本人も湿度の多い温度の高いところでの作業ですから、同じく炎天下での造園などの作業にはない注意が必要です。高齢者の場合特に気を付けたいのが、夏以外でも急激に暑くなったときです。加齢により外気温の急激な温度変化に対して、皮膚の温度センサーの感度が鈍くなっています。皮膚血流量を上昇させ発汗をうながし体温を下げる力が低下しているのです。

 基本的な注意としては、スポーツをする場合、30分に1回程度の休憩と0.2%程度のミネラル成分を含む飲料で水分補給です。朝の味噌汁をおかわりするのもいいことです。煮出した熱い麦茶をすすりながら梅干を食べるのも日本的な解暑法です。作業現場では重なる疲労や睡眠不足によって、大きな事故に結びつく場合もあります。無理をせず休憩時間を確保して体温の上昇を防ぎましょう。特に高齢者の場合は、口渇感を感じにくくなっていますから、口渇を感じなくても定期的な水分補給を心がけましょう。特に糖尿病の方や利尿剤系の降圧剤などを服用している場合には、スポーツ飲料は倍以上に水で薄めて飲みたいものです。

 漢方の立場から熱中症をみると、単に水分不足という考え方にとどまらずに、血行不良という可能性まで考えられます。漢方では汗をかきすぎると血がネバネバになると考えています。実際、現代医学でも、エンドセリンという物質が血液中に増えて血管や気管を収縮させるので無酸素運動状態を増やします。更には、赤血球の膜が硬くなり、それより細い毛細血管を通れなくなってしまい、末梢での血行不良が深刻なダメージを与えるという説が唱えられているのです。

 「生脉散(しょうみゃくさん)」は、薬用人参と麦門冬と五味子という3種類の薬草で成り立つ処方です。体内の潤いを保ち、血行を改善する第一選択の処方です。薬用人参はご存知の朝鮮人参です。「気」を補って新陳代謝を助け活力を高めます。麦門冬はユリ科の植物の塊根です。余分な熱を冷まし体内の潤いを補い口の渇きや過剰な食欲を抑えてくれます。五味子は植物の果実です。五つの味がするのですが、一番ハッキリしているのが酸味です。梅干しを思い出しただけで唾液が出るようにのどの渇きを潤します。さらに、収斂作用がありますから、過剰な発汗を抑制して汗ばかりでなく汗と一緒に「気」が漏れ出てしまいバテるのを防いでくれます。

 「生脉散」「麦味散」という名前で輸入されています。スポーツ飲料に混ぜて水で倍に薄めて飲むのをお勧めします。夏の養生が冬の健康につながっていきます。


足に水虫ができて困っています。

Q:二十年前から、足に水虫ができて困っています。はじめは足の指の股でしたが、かかとがガサガサして、爪も白く厚くなってしまいました。夏になると手のひらの皮もむけて人に見せられません。何か所かの皮膚科でいろいろつけ薬を試しましたがうまくいきません。飲み薬を勧められて飲みましたが肝臓の数値が悪化したのでやめました。漢方でよい薬はありますか?(前橋 M雄)


A:水虫は、現代医学では、白癬菌が皮膚の角質層に寄生してなる病気です。温度と湿度が上がってくると、痒みや痛みを感じるようになって、夏を感じる人が多いと聞きます。あるデーターでは、サラリーマンの4人に一人は水虫であるとされていますし、女性にも増えているとされています。症状は主に足の指の間やかかとに出来ますが、股間部や爪にも発生し、基本的には体中どこにでもできる(陰のう部はなりにくい)治りにくい皮膚病です。

中国漢方では「香港脚」などと言い、身体に「水のよどみ」ができやすく抵抗力の弱い人がかかる病気としています。同じように菌の付いている足拭きを使ってもうつる人とうつらないひとがいるから、外の条件より個人の体質を重視します。日本は温帯モンスーンで湿度が高いのに、最近は動物の脂をたくさん摂取するようになりました。揚げ物や乳製品です。胃腸の働きが冷たい飲食で弱まると、揚げ物や乳製品の消化吸収が充分でなくなり、身体に水がよどむのが主な原因と考えています。

治療の前に、まず皮膚科で皮膚の切片を染色して確定診断を受けましょう。似たような皮膚病には「接触性皮膚炎」「貨幣状皮膚炎」「カンジダ症」「掌跡膿胞症」「アトピー性皮膚炎」「脂漏性湿疹」などがありますが、専門家によるしっかりした鑑別が必要です。

治療としては、現代医学の方法で内服薬が勧められる場合がありますが、定期的な肝臓の検査をして副作用が出たら中止しなければなりません。

漢方では、まず、白癬菌が寄生しにくい皮膚にする必要があると考えます。日本の伝統食を時間をかけてよくかんで食べ、水のよどまない体質に切り替えます。高脂血症や糖尿病などの疾患は治療します。外出から戻ったら手を洗うように足も洗いましょう。患部をいつも清潔に乾燥させるように心がけます。

次に、土槿皮酊(どきんぴちんき)を、皮膚につけます。数日つけると痛くなりますから、落ち着くまで休んで、また繰り返しつけます。特に風呂上りが効果的です。指の股などの皮膚の薄いところ華陀膏(かだこう)を勧めます。爪には爪の生え際に根気良くつけます。さらに、棒灸(中国温灸)で、一回10分程度温めます。乾かすことと熱することで、白癬菌が寄生しにくい皮膚にします。爪の場合も爪の生え際を温めます。

水虫が治る薬ができたらノーベル賞などといいます。私も爪の水虫は内服以外治らないと思っていましたが、富士見村の患者さんが上記の方法で治ったので、他の患者さんに勧めて喜ばれています。とにかく、根気です。聞くところによると、抵抗力の低下した高齢者が集団生活をする場面では、感染が広がりやすく、介護を受け持つ若い人たちにも感染がおきているということです。一度かかると、家族にもうつる可能性が高まります。「お父さんの洗濯物と一緒に洗わないでっ!」と言われないように、早く卒業したい病気ですね。


中学2年の息子がひきこもりに・・・

Q:中学2年の息子について相談します。昨年の5月から学校へ行かなくなり、部屋にこもるようになりました。初めは、家族とも話していましたが、最近は機嫌のいいときでないと出てきて話をすることもなくなりました。本人はオドオドしたりイライラしたりしています。お医者さんにも行かないので、困っています。なにか効果のありそうな漢方薬はありますか?(鬼石 M江)


A:いわゆる「ひきこもり」という状態で、たぶん「昼夜逆転」といって家族が寝静まるのを待って(家族と顔を合わせて話をするのを避けて)台所で食べ物を探して、家族が起きる頃に、寝るのでしょう。

 まず、息子さんがこれまでかかってきた小児科のお医者さんに、お母さんだけが行って状況を話して対応を考えてもらってください。その先生が受けてくれるかしかるべき先生を紹介してくれます。もしうまくつながらなければ、「県・こころの健康センター」に問い合わせても良いかと思われます。

 さて、漢方の方ではこれまでの経験から、効果がみられたケースが数多くありますので、ひとつの選択肢として考えられるのは充分に意味のあることだと思います。

 中国漢方では、病気の原因を、外因と内因にわけて考えます。外因は、気象の変化。内因は働きすぎや飲食の不摂生と情緒の不安定としています。情緒の不安定を「七情内傷」といい、怒りは肝を傷つけ、喜びは心、思いは脾、悲しみと憂いは肺、恐れと驚きは腎を傷つけるというように、こころと体は裏と表と考えています。

 精神的なストレスのコントロールがうまくいかない場合、もっとも影響を受けやすい臓腑は中国医学で考えるとされています。緊張状態が長く続くと、気の流れが邪魔されて「肝熱」「肝火」といった熱症状に変化しやすいとされています。火の炎が上に昇るようにこの場合の熱感も上に昇ります。

 怒りっぽい・イライラしやすいなどのほかに、顔が赤くのぼせる・目の充血・血圧の上昇・こめかみの脈を打つような頭痛・頭が膨張するようなめまい・特に左側の肩こりなどの症状がみられます。病院では、更年期障害・自律神経失調症・高血圧症・口内炎などの診断を受けていることが多いです。

 漢方では、こういった場合に、肝の気の流れを良くする「疎肝薬」として柴胡と言う薬草を使います。日本の漢方で、柴朴湯・柴苓湯・柴胡桂枝湯などがこれに属します。しかし、これらは、のどから胸・わき腹の塞がる感じを緩和したり、むくみをとったり、冷えのぼせを解消したりするのを目標にしています。

 「釣藤散」慢性化した気のめぐりの滞りを改善してくれて、同時に顔や頭の熱傾向を解消してくれます。舌の色は赤みが強く、引き締まり方の弱いこともあります。舌の苔は白くやや厚い場合に用いられます。中国では「天麻釣藤飲」を使いますが、残念ながら日本には輸入されていないようです。

 「竜胆瀉肝湯」は熱傾向が水のよどみと合わさって、もやもやした内側にこもっただるさとイライラの他、下腹部の熱症状にも使われます。舌の色は紅で苔は黄色く厚いです。排尿痛・陰部の湿った痒み・臭いの強いオリモノに使われます。

 いずれにしても、生活にメリハリをつけて、リラックスする時間とストレスと向かい合う時間をうまく工夫して生活するのが予防法であり治療法であると思います。


乳がんの診断を受けました。

Q:36歳の娘が乳がんの診断を受けました。聞くところによると、3ヶ月も前から異常に気が付いていたのに、仕事が忙しいのと恥ずかしいので、病院に行くのが遅くなったというのです。これから抗がん剤で小さくしてから手術と言われています。何か良い漢方薬はありますか?渋川市 K代)


A:樹木希林さんが乳がんの手術を受けてさっぱりしている姿を見て、恐怖心が薄らいだ人も多いと思います。

 しかし、考えなければならないのが、乳がんが異常に増え続けている原因が明確にされていないということです。1970年に乳がんで死亡した率は4.7%だったのが、2002年にはなんと14.9%に跳ね上がっています。(人口10万人に対するもの)その間、何億というお金が早期発見のための検診や治療技術の革新や抗がん剤の開発につぎ込まれているにもかかわらずです。

 しかも、人間が長生きするようになったから、がんが増えたように見えるという学者もいますが、乳がんは若い人が増えています。30才から45才の患者さんを中心にこの20年で3倍に増えているのです。

 がんが、ストレスによって起きやすいということは広く知られるようになりました(阿保徹先生による説)しかし、乳がんについては、食事が大きな要素であることが著書「粗食の勧め」で知られる管理栄養士の幕内秀夫先生によって叫ばれています。乳がんの爆発的な増加の原因は食の欧米化で、これを食い止めるにはご飯を中心にした日本の伝統食の復活が欠かせないと言うのです。

 もちろん、個人を治すのは大切なことです。しかし、乳がんになる前に予防し再発しないように抑えていく方法を模索していくのが、日本全体を考えたときより大切なことだと思います。

 さて、手術前に抗がん剤による治療でさまざまな副作用が出ます。日本では「十全大補湯」「補中益気湯」が第一選択とされていますが、私の経験では「参茸丸」「参茸補血丸」です。患者さんがもともと持っている病気と闘う力を強力に支えます

 よく、健康食品でがんにイイとされるものがあります。しかし、「事件は会議室で起こっているんじゃなく、現場で起こっている」のと同じで「病気は試験管の中で起こっているのでなく、身体の中で起こっている」のです。患者さん本人の病気(抗がん剤・放射線・手術による体力の低下)と闘う力と関係のないところに目を奪われては、足下をすくわれると思います。

 もちろん、自己治癒力を発揮する「気功」「生きがい療法」なども取り入れて、がんになったこれまでの生活の悪いクセを変えていく努力もとても大切です。

今年も花粉症に悩まされる?

Q:今年の春のスギ花粉は、例年の数十倍とテレビで言っています。私は、その季節になると少し鼻水が出たりくしゃみが出たりしますが、どうなるか心配です。漢方で悪くしない方法はありますか?(前橋 Y彦)


A:確かに、花粉症と呼ばれている「アレルギー性鼻炎・眼炎・皮膚炎」の患者さんは、日本で一千万人とも言われて、増え続けているようです。症状を軽減するのも必要ですが、一体どうしてこの国に暮らす人たちは、自然の物にアレルギー反応を起こしてしまうようになったのか、考えなければならないと思います。「化学物質過敏症」「アトピー性皮膚炎」「ぜんそく」「膠原病」などもひとくくりで言うべきでは無いのでしょうが、蔓延しているとしかいいようがありません。

 漢方でも、さまざまな議論がされました。はじめは、「小青龍湯(しょうせいりゅうとう)」鼻水とクシャミを抑える働きに注目が集まりました。しかし、症状を軽減する事はあっても、症状がないときに続けて服用しても体質改善には結びつかないと考えられるようになりました。そればかりか、目やのど・耳や皮膚の炎症に対しては、反って増悪する可能性もあると指摘されるようになりました。

 「葛根湯加川●辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)」は、肩こりを伴なった頭痛・鼻詰まりには効果は期待できます。クシャミなどよりむしろ副鼻腔炎などに応用されているようです。

 「エンビ」は、錠剤で服用しやすく、鼻水・クシャミから鼻詰まりなど、鼻には効果は期待できますが、目や皮膚炎には期待できません

 「辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)」は、鼻詰まりとそれに伴なう口渇の症状緩和の効果が期待できます。やはり目のかゆみには期待できません

 「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」は、鼻詰まり・目やのど・皮膚の炎症に効果が期待できます。透明の鼻水よりも色のついた鼻汁に適しています。

 「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」は、症状の予防に使われています。症状の緩和の力はあまり強くありません。

 以上、保険適応の主だった漢方薬を紹介しましたが、保険外で「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」が注目されています。免疫の調整の作用を持ち、症状の緩和から体質改善までさまざまなアレルギー疾患に応用される価値のあるもので、他の漢方薬や現代医学の薬との併用もまず問題ない一押しのお薬です。

●=くさかんむり+弓

耳鳴りと難聴とめまいに悩んでいます。

Q:3年前から耳鳴りと難聴とめまいに悩んでいます。病院の耳鼻科での検査の結果「前庭神経炎」との事でした。他の病院でも検査を受けましたが、「仲良く付き合って行って下さい」と言われてしまいました。漢方薬でいい薬がありますか?(黒保根村Y雄)


A:耳鳴りや難聴、めまいの原因はさまざまです。突発性難聴もその一つです。基本的には耳鼻科に早めに相談し、必要があれば脳外科で検査を受けたり、高圧酸素などの施設に紹介を受けます。現代医学的には、治療効果が現れる期間は3ヶ月程度と言われていますので、時期を逃さず専門医に治療を受けることをお勧めします。

 その時期に完治に至れば良いのですが、うまく行かなかった場合は、おっしゃるとおり直接命に関わらない病気として日常生活の質を高めるように努力の方向を変えるのも必要でしょう。しかし、耳鳴り・難聴の苦しみはなった人でなければ分からない辛さがあります。寝ようとするとそれまで受け流せていた耳鳴りが大きくなって眠りのじゃまになる。四六時中、騒音の拷問を受けているようだ。耳にねじがついていれば取り外して欲しい。患者さんにとっては本当に大変です。

 漢方では五臓六腑でいう、腎と肝に関わりが深いと考えています。「黄帝内経」という漢方の古典には「腎は耳に通じる」「腎が健康なら五音を聞き分けられる」と書かれています。耳の病気は腎を疑え、と言うことなのでしょう。漢方で言う腎とは、泌尿器だけでなく生殖器系や脳神経系まで含めた概念を持っています。「腎は精を蔵す。精は髄を生じ、脳は髄の海」という表現があります。腎のエネルギーが脳を満たし耳の働きを支えるという漢方独特の考え方です。仕事でほとんど休む間もなく過労ぎみだった人。中には出産を契機に耳鳴りが始まるケースもあり、納得がいく部分もあります。「ジー」「サー」「ミーン」など、低い音の場合が多いです。腰や膝に力が入らない・痛いといった症状を伴なうこともあります。この場合、腎の精を補う働きと鎮静作用をのあるジメイ丸という処方が勧められます。

 一方、肝の音は「キーン」「ピー」さらには「ゴロゴロ」という場合が多く、ある日突然始まりまることが多いです。ストレスがたまってイライラのピークに達した時に始まったり、心配事が重なった時に始まるケースもあります。肩こりや頭痛を伴なうこともあります。鍼や灸で病気が治るのは、漢方で言うツボに刺激を加えて網の目のように全身に巡らされたつぼの流れ(経絡)と対応する内臓に刺激が届き、気の流れを整えるからだとと言われています。ちょうど耳の所には肝胆のツボの流れがあるので、精神状態が不安定な人はこのタイプの耳鳴りに悩まされることが多いようです。その場合、先ほどのジメイ丸だけでなく自律神経の興奮を安定させる作用のある竜胆草(リンドウ)の根を含んだ龍胆潟肝湯(りゅうたんしゃかんとう)の併用をお勧めします。

おねしょが治らなくて困っています。

Q;小学校四年生の男の子のことで相談します。おねしょが治らなくて困っています。以前は起こしていましたが、親も疲れて起こしきれません。朝になってみると乾いてしまっていることもあるので、明け方でなく夜中の早い時間にしている様です。他の事は活発にこなす子供ですが、来年の林間学校や修学旅行を控えて友達に知られるのが心配らしく、この事については、触れられるのがいやなようです。漢方に効果のある薬はありませんか?(笠懸K子)


A:おねしょについては、10年ほど前に、ちょうど西安からおいでになっていた漢方薬剤師の劉先生のアドバイスでデータを取ったことがあります。テレビ局の発行している主婦向けの月刊雑誌に「薬膳」特集を載せました。「冷えに良い」「美肌に役立つ」などの中に「中国でおねしょに勧められている」という事で、オニバスの実のお粥を紹介しました。翌日早朝から電話が鳴り続け、文字通り北は北海道南は九州沖縄まで、問い合わせの対応で一ヶ月間は日常業務がまともにできなかったのを覚えています。その時にとった二千件のデータでは、「長男・長女の順で多い」等の他に、漢方で言う「腎虚」(泌尿器の発育不全)より「脾虚」(胃腸虚弱)の事例が多いなどの結論が得られました。

 アドバイスとしては、「起こさない」「しからない」「待ちの姿勢」ということが大切に感じます。起こすと、夜におしっこを作らないようにするホルモンの体内時計ができにくいという説があります。しかると、寝る前に緊張してしまい頻尿になる。(尿崩症などの疾患がなければ)必ず治るという家族の寛容さがなによりのエネルギーだと思います。

 中国の漢方分野では、下腹の「関元」と言うツボ「吸い玉」という器具で刺激する方法で、治る例も見られます。

 薬では、「六味丸」が基本処方です。冬、強く冷えを訴える場合には「八味地黄丸」の方をお勧めします。胃腸虚弱で疲れやすく風邪引きやすい場合には「小建中湯」をお勧めします。中国では、手足が特に冷えてしもやけになる場合に「当帰建中湯」を、風邪を引きやすくなかなかなおらない場合に「黄蓍建中湯」を勧めています。また、眠りが深く、起こしても気が付かない場合に「麻黄」という薬草の入った処方を使うと眠りが浅くなると、長春からおいでになった袁先生がおっしゃっていました。

 日常生活で注意する事は、冷たい飲みものを摂らないようにします。氷の浮いているものや果物も日が沈んでからは摂るべきでありません。日本では夕食後に果物を摂る習慣がありますが、避けたいものです。更に満腹まで食べる事も避けたいことです。消化吸収するには、余裕のある腹八分目です。食べ過ぎで身体を弱くしてしまっているのは人間だけではないでしょうか?刺激の強いテレビやゲームも特に夜は控えたいものです。


老化防止には効果がありますか?

Q:漢方薬が昔から良いということは、聞いていますが、老化防止には効果がありますか?私は、少し顔にシワが増えて、足腰が疲れやすく、のぼせがあって、もう更年期が来ているのかなと、心配です。俳優の森光子さん84才であんなにお元気なので、自分もその歳になった時、森さんの半分でも元気でいられたらと思います。効果のある漢方薬はありますか?(花輪 H子 38才)


A:はい、確かに、老化防止にお勧めできる漢方薬はあります。それは、「抗老防衰」という考え方にもとづいています。

 人は年齢とともに、新陳代謝や免疫力が低下して、老化して行きます。目がかすんだり、疲れやすくなったり、動悸がしたり、たくさん食べられなくなったり、息切れがしたり、おしっこがうまく調節できなくなったり、いろいろです。

 おっしゃるように、森光子さんのように、84才になっても50才代にしか見えない(見た目だけでなく体力も合わせて)人もいますし、不摂生をしているわれわれ凡人は、早く歳をとるのかもしれません。

 中国漢方では、「先天の精」といって遺伝的な要素「後天の精」といって養生に関わってくると考えています。養生とは、イライラしたりこだわらない・緩やかな運動(水中ウォークなど)・日本食を食べ、良く噛む・肩の力を抜き息を深く吐く・性生活を調節するなどがあります。もし、不調を感じなくても信頼できる漢方の専門家に相談すれば舌の状態などから、「未病」を見つけて体質の偏りが病気として芽を出す前に摘み取ってくれるでしょう。さらに、最近では、「人は血管とともに老いる」と言われ、動脈硬化だけでなく末梢血管も注目される様になりました。「丹参」という薬草を主成分にした「冠元顆粒」もお勧めできます。

 お問い合わせの件ですが、顔や肌がカサツキやすいのは、「肺腎陰虚」として麦味地黄丸(日本では八仙丸と言います)も考えられますが、他の症状から「肝」「血」不足杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)の適応と思われます。肝は筋を司りますから膝や腰の渋い感じがある場合、肝に失調があると考えられます。のぼせも肝の血が充分にあればあるべき所にある熱が、居場所を失って上に昇ってしまっている現象です。むやみに冷やすのは命を削る事になるのですべきではありません。


便秘と漢方

 先日、北海道・日高地方の牧場で、のんびりさせてもらってきました。見渡す限りの放牧場を歩いていると、牛でも馬でもないフンと足跡を見つけました。尋ねてみると鹿なのだそうです。牛や馬の豪快な気持ち良さそうな排泄行為は憬れますが、姿を見ると跳ねるように逃げていく鹿のそれは見られなかったので次のチャンスを待っています。

 自然の中の動物は、一日食べて排泄して寝ています。人間は、食べたり排泄したり寝る時間を節約して、何を得ようとしているのでしょうか?

 漢方では、舌の色が淡い時「首烏延寿片」(21日分2500円)舌が渇きやすい時「麻子仁丸」(21日分1600円)舌の色が紅い時「大甘丸」(28日分1300円)をお勧めします。煮出して飲むお茶に「はとハブ茶」があります。16日分で850円です。

 冷たい牛乳のイッキ飲みで無理に下痢をさせるのは好ましくありません。