過去の掲載文です。どうぞ!ご覧下さい


夜間頻尿

 Nさんは、63歳の女性です。夏は1回だったのが、秋を迎えたら5回になってしまいました。夜寝ているときに起きて小水に行く回数です。夜十時に寝ると一時までは寝られますが、それから一時間おきにトイレに起きます。寝た気がしないというのがNさんの悩みです。

 最近は、夜間頻尿を訴えて漢方相談においでになる患者さんが増えています。私はまず、信頼できる泌尿器科の専門医への受診をお勧めします。その上で、現代医学で対象となる疾患が無い場合や充分な効果が得られないときは、いよいよ漢方の出番です。

 ところが、漢方薬を飲む前にチェックすることはまだあります。寝る前に水をコップ一杯飲むと脳卒中を防げるといわれています。しかし、そのための夜間頻尿は、どうしたらいいのでしょうか?夏ならまだしも、脳卒中の危険性もそのほうが増えるのではないかと心配しています。

 さて、日本の漢方で第一選択は、八味地黄丸(はちみじおうがん)とされています。ところが、この処方を試みてうまくいかないケースもあるようです。それは、この処方の飲み方に問題があると思います。もともとこの処方の中には、茯苓(ぶくりょう)沢瀉(たくしゃ)という利尿薬が含まれています。私は、この八味地黄丸を昼過ぎまで服用してもらって充分利尿しておいて、夕食後には別の処方で体を温める方法をお勧めしています。この方法で良い結果が得られるケースをよくみます。その別の処方は、その人によって違います。眠りが浅い人には酸棗仁湯(さんそうにんとう)足腰の痛みのある人には疎経活血湯(そけいかっけつとう)。利尿薬を含まない、血の循環を促進して体温を上げるような働きを持っている処方を勧めます。

中国では、兎絲子丸(とししがん)が第一選択ですが日本にはありません。日本に輸入されている参茸丸(さんじょうがん)が近い処方として勧められます。

 冒頭のNさんをはじめ、冷えから頻尿になるケースでは、多くの患者さんがこの方法で寛解しています。ただし、炎症や熱症状を持っているときは、まったく違う処方を使わなければなりません。近所の信頼できる漢方に詳しい専門家に相談してください。

 キーワードは、昼間の水分補給です。


朝起きられない症候群

 今年は秋の訪れが遅く、気象庁の三ヶ月予報でも、暖冬が予想されています。それでも、だんだん寒くなってくると、朝起きて布団から出るのが辛くなってゆきます。今回は、そういった「朝起きられない症候群」の方への漢方からの提言です。

 漢方相談においでになる方に、うかがうことの中に、夕食の時間と布団に入る時間があります。夕食が六時の人は十時前後に布団に入ります。夕食が八時を回る人は布団に入るのも一時を回る人が多いようです。やはり、十二時を過ぎて寝ると翌朝七時前に起きるのは辛くなります。三十年前は十一時にテレビの主だった番組は終了するので、夜更かしの人も十一時には寝ていました。

 また最近増えてきたのが、二度寝タイプの人たちです。夕食は八時前に終わるのですが、食事が終わったとたん起きていられなくて、居所寝(いどころね)をしてしまいます。コタツなどあれば、抵抗できません。気が付くと一時を回っていて、片づけをして風呂に入ると、眠気も覚めてしまう。そういう働く女性の話をよく聞きます。

 朝起きられない人たちの多くが、舌の引き締まり方が足りなくひどい場合は歯の跡がくっきりついている「気虚(ききょ)タイプ」のケースが多いです。生命エネルギーが不足しているので、血圧も低く体温も低いことが多いです。疲れやすく、食事の後に眠くなります。眠る力も弱いので朝起きても気力が湧いて来ないのです。仕事のしすぎに注意して、朝日が当たる部屋で寝て朝日を浴びましょう。昼食前に二十分でも散歩をしましょう。麦味散(ばくみさん)が第一選択です。夜九時に寝て朝四時に起きればいいのです。

 別のケースで、舌の上に厚い苔がついている「痰湿(たんしつ)タイプ」の場合もよくみられます。からだが重だるく、口臭や体臭が気になるので、舌の苔を歯ブラシなどでこすり落とす人もいます。動物性の脂肪(肉や乳製品)の食べすぎが主な原因とされていますが、食べる時間も遅すぎます。夜八時を回ったら、味噌汁だけとかお粥だけとか(昔なら蕎麦がきを食べたり葛湯を飲んだりしましたが)だけにします。朝、お腹が空いて起きるくらいにします。毎食前に晶三仙(しょうさんせん)を舌の上で溶かして飲むと舌の苔がとれて口臭も収まります。夜の食べ物のテレビ番組を見ないようにしましょう。

キーワードは、軽い運動と空腹です。


風邪を引きにくい体質になりたい

 風邪を引きやすい人は、年中引いています。やっと治ったかと思うと、また、鼻がグズグズ、喉がイガイガ、頭がズキズキ、節々がシクシク。家事も仕事も学校も、休みがちになって困ってしまいます。

 先日、血圧が高くておいでになっていた患者さんが、「漢方薬を飲み始めて3年になるが、主治医からしょっちゅう引いていた風邪を引かなくなりましたねと、言われましたよ」と話がありました。二日後に、その患者さんの知り合いで、しょっちゅう風邪を引いている方が漢方相談にやってきました。

 風邪を引くのは、漢方でいう「脾」「肺」に問題があることが多いです。「脾」=消化器系が弱いとせっかく食べたもののエネルギーが充分吸収できずに、抵抗力につながっていきません。日ごろから歩くことを心がけて、冷たい飲食を避けて、ゆっくりよく噛んで食べて食後も休みましょう。食事の時間も一定にするように心がけます。「肺」=呼吸器系が弱いと少しの気温の変化に粘膜が炎症を起こしやすくなります。今の時期から乾布摩擦で皮膚から鍛えましょう。朝起きたら窓を開けて上半身裸になって、背骨の両脇指二本幅外側が赤くなるまで肩から腰まで擦ります。仕上げにお腹を絞るように深く息を吐くような気功もお勧めします。

 漢方では、舌の引き締まり方の弱い場合玉屏風散(ぎょくへいふうさん)が第一選択です。日本には「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」という名前で輸入されています。保険範囲では黄耆建中湯(おいぎけんちゅうとう)補中益気湯(ほちゅうえっきとう)で代用します。

 しかし、臨床の現場では「心」が原因で風邪を引くケースもあります。今置かれている立場が辛い場合、胃が痛くなるとか肩が凝るとかの症状がでる以外に、風邪を引くという表現をとって寝込むこともあります。長期にわたって不安や緊張の強すぎる環境に置かれたら、時には風邪のひとつでも引くくらいの余裕があったら良いなと思います。

より高い位置から患者さんの訴えを捉える必要のあるケースもみます。患者さんの思いを吐き出せる環境を用意して聞き出していく中で、患者さんの中で今の困難の原因と今出来ることに気付く機会を提供できればいいなと思っています。漢方では、舌の引き締まり方が弱い場合が多いので、帰脾湯(きひとう)が第一選択です。

キーワードは、マイペースです。




 今年の夏は、湿度が高くて夏の疲れがとれないひとも多いと思います。眠りが浅くて朝起きても寝た充実感がないとか、尿の勢いが弱いなどさまざまです。そんな中、に悩む患者さんもなかなか減りません。

 痔の原因は、もともとネズミのように四本足歩行から直立歩行になったことにあるといわれています。背骨が家の梁として使われていたのに頭を天辺に乗せて柱として使うようになって、胃下垂・肩こり・腰痛・難産などの不都合のひとつとして痔も現れたとされています。

 ところが、一日に30キロも歩くような羊飼いなどには、痔を持つ人が少ないとされています。筆者は、繊維質の少ない加工食品の摂り過ぎと夜更かしと運動不足などが原因とおもわれる痔になったことがあります。しかし、養生を心がけて、シャワートイレを使うようになって、痔の悩みを忘れるようになりました。しかし、羊飼いたちには、シャワートイレはありません。下半身が充実して食生活が安定していると、拭かなくても大丈夫と言うツワモノもいます。なかなかそこまでにはなれません。

 漢方から考えると、虚のタイプには次の二つが考えられます。まず、いつもだるくて内臓下垂などをともなう舌の引き締まり方の弱いタイプ。肛門の引き締まり方も弱いので、切れ痔や脱肛や痔ろうになりやすいです。補中益気湯(ほちゅうえっきとう)が第一選択です。次に、冷え症で手足の先が冷える、舌の色が薄いタイプ。冷えにより血行が悪いので、イボ痔や切れ痔になりやすいです。◆帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)が第一選択です。

 一方、邪気が気血の巡りをじゃましている、実のタイプには三つ考えられます。実のタイプはとどこおるのでイボ痔が多いです。まず、ストレスをためこみいつもイライラして気の巡りを邪魔しているタイプ。肋骨の下の張って固いです。大柴胡湯(だいさいことう)が第一選択です。二番目に、動物の脂が多過ぎて運動が足りなくて血の循環を邪魔しているタイプ。目の下にクマが出来たり唇の色や舌の色がくすんでいたり、舌の裏側の血管が怒張していることが多いです。浸膏槐角丸(しんこうかいかくがん)を勧めます。最後に、動物の脂が多く冷たい飲み物の摂り過ぎで水のよどみを作ってしまうタイプ。舌の上に厚い苔がついて浮腫みやすく、体臭や口臭で悩まされます。茵■蒿湯(いんちんこうとう)を勧めます。

 いずれにしても、直腸がんなどとの鑑別も必要なので、近くの評判のいい漢方を専門に研究している専門家に相談して薬を選んでもらってください。

◆→草冠+弓 (日本語の標準パッチに入っていない字です。)
■→草冠+陳 (日本語の標準パッチに入っていない字です。)


メタボリックシンドローム

 日本人、特に群馬県人は、気が短くて熱しやすく冷めやすいといわれます。あえて、カタカナで恐ろしげに表現することで注目されて、昼のワイドショウや夜の健康番組でさまざまな切り口で紹介されます。それでも、昨日まで身に付けた偏った栄養概念と生活習慣を、明日から変えられる力になっていかないので、いつまでたっても患者さんが減っていきません。

 メタボリックシンドロームの定義は他で詳しく述べられていますが、一言で言えば、内臓脂肪がたまって高血圧・高脂血症・高血糖などになり、さらにそこから動脈硬化を経て、心臓・脳神経・腎臓・肝臓などの多臓器不全をおこす体質傾向といえるでしょう。これまで病気を分析する「医学」が主体になり、患者さんの身体全体を考える「医療」の見方が充分確立されてこなかったので、今になって話題になりました。簡単な話です。肥り過ぎが病気の元です。

 それでは原因は何でしょう?喫煙や飲酒などは枝葉の問題です。幹は食べ過ぎと運動不足です。私はその根っこが欧米食と自動車にあると考えます。日本人が欧米食をまねして病気になり、アメリカ人のインテリ層や女優さんは日本食を食べて病気を予防しています。朝の散歩の時間を売って座りきりの仕事をして自動車を手に入れます。

 ある女性の大学の先生が、相談においでになりました。病気になる一歩手前であることをしっかり理解していたので、一日一時間の運動と日本食を指導して、三爽茶(さんそうちゃ)を勧めました。半年後には7キロ痩せて、5歳は若返った先生が笑っていました。一緒に来たアメリカ人のご主人は「ニューワイフ」といって照れていました。

 舌に白い苔が付いている人は、漢方でいう湿毒ですから二陳湯(にちんとう)をベースにします。舌に黄色い苔が付いている人は、湿熱ですから茵■蒿湯(いんちんこうとう)を勧めます。舌や唇の色が黒ずんでいる人は血の滞りとして冠元顆粒(かんげんかりゅう)を勧めます。イライラを食べたり飲んだりして解消してしまう人には、専門家によるカウンセリングと開気丸(かいきがん)が勧められます。

 キーワードは、こころのあり方と日本食です。

■→草冠+陳 (日本語の標準パッチに入っていない字です。)


夏ばて

 地球温暖化のせいか、暑さが異常のような気がします。それとも身体が弱っているのか、とにかくだるいという人が増えてきています。考えてみると世界中、仕事は必要悪というスタンスが普通のような気がします。数年前中国で昼寝の習慣をどうするかと論議がありました。スペインのシエスタが最近議論になっているようです。

 それどころか、ローマにいるいとこの話だと、7月中旬から一ヶ月以上街が機能しなくなると言います。森の湖畔で家族・知人と人生を楽しむのが普通だそうです。昼寝どころか昼食も落ち着いて食べられず、夜九時まで食事もせず働いて、休みは一斉に盆休みだけという日本は、世界から見たらまだまだエコノミックアニマルなのでしょう。夏ばてする前に休みたいものです。

 夏ばての第一の原因は、新潟大学の安保徹教授のおっしゃる自律神経の失調でしょう。いつものストレスに重ねて、エアコンの効いている部屋とそうでない場所の温度変化は大きなダメージになります。金魚の水を取り替える時は温度差を気にします。人間は急に冷たい空気を吸ったり身体に吹きつけたりしてもそのときは気持ち良く感じてしまいます。それに重ねて、最近の水飲みブームで反って消化液が薄められたりして、食欲不振になりがちです。眠りが浅くなれば、だるさに直行です。

 出来る限り扇風機のようなもので風を回すように心がけて、温度差を作らないようにします。夏は暑いのです。熱い麦茶を飲みましょう。気持ちのいい汗が出ます。昼寝の時間を工夫して作りましょう。ゴーヤミョウガのような苦い香辛料や生姜などもうまく使い、緑豆も身体の熱をとってくれます。

 漢方では、食欲を回復することを考えます。脾の気が高まれば全身の気が高まってだるさが解消されます。舌の引き締まり方が弱くて苔が白い場合香砂六君子湯を勧めます。舌の大きさは普通で苔が黄色い場合には晶三仙を勧めます。これらは軟便傾向にも効果が期待できます。急性の下痢には開気丸を、慢性の下痢には啓脾湯を勧めます。不眠には、舌が紅ければ酸棗仁湯を、舌が淡ければ帰脾湯を勧めます。

 キーワードは「昼寝」です。


心臓病発作

 長かった梅雨が明けて、暑い夏が来ました。クーラーや冷たい飲み物からどうしても離れられない今日この頃です。夏ばて防止にこってりとした食事に偏ったり、ついつい運動不足になりがちです。この時期は、真冬のものとされている狭心症や心筋梗塞の発作が起こりやすい時期であることは、案外知られていません。

 最近の若い人は、脂肪分や糖分の多い加工食品に偏りがちです。しかも、夜遅く食べることが多く、テレビを観ながら飲み込むように食べます。深夜2時に寝るのは普通です。その結果、若年層の動脈硬化が進んでいるというデータもあります。

 冷房と外気の温度差による自律神経の乱れ、暑さによる疲労・睡眠不足などによって発作の引き金がひかれる可能性が高いのです。

 中国漢方の立場から考えると、大量の汗をかくと同時に体内の気(生命エネルギー)も漏れ出てしまうと考えられています。心臓の機能が低下すれば動悸・息切れ・不整脈などが生じます。もちろん、発汗によって体液が消耗して血液が濃くなって血栓が出来やすくなります

 これまで、こういった状態の体質に「生脉散(しょうみゃくさん)」が第一選択で使われてきました。気の力を補う人参、体液を補って喉の渇きを潤す麦門冬、汗と気が漏れ出ないように引き締める五味子が含まれてきました。日本では麦味参顆粒という名前で手に入ります。やや体が冷え気味の人に勧められます。

 ところが最近はより熱しやすい体質の人が増えてきました。ストレスや過労の繰り返しによって、身体を冷ます力が足りなくなってしまって首から上ののぼせや手足のほてり、便秘や不眠に悩まされるケースが増えてきました。中国では大補陰丸という処方がありますが、日本では涼血清営顆粒という発展処方が入手できます。便秘や吹き出物から腹部膨満感から痔にも効果が期待できます。

 自分で出来る予防としては、これまで述べた原因の反対のことをする他、手足や指を良く動かす・腰湯をするなどがあります。

キーワードは、「暑いときこそ熱い麦茶」です。


夏かぜ予防

 カラオケに行くとよく歌う曲があります。井上陽水さんの「少年時代」。まだ人の手の入っていない敷島の松林の小川。キラキラした夏が懐かしいです。白いランニングに気持ちのいい汗が光り、浴槽の冷たい水に浮かんだスイカは充分冷たく甘かったです。

 最近は温暖化の影響か、緯度が下がったように高温でスコールのような雨が降り、湿度が高いです。いきおいエアコンの効いた部屋にいると、汗をかけずに体内の水分代謝が乱されます。何億年もかけて作った体内時計は夏なのに、汗をかけずに自律神経が乱れ、不眠やだるさ・食欲不振の原因にもなります。

 一方、氷を浮かべた飲み物や冷えたビールなどについ手が伸びます。胃腸が正常な機能を発揮する消化器部の体温が維持できなくて、消化能力が著しく低下します。もっと困ることは、ダラダラと摂り続ける水分や食事のときにガブガブ飲む冷たい水分の過剰摂取です。消化液が薄められて消化酵素が働けないと、食欲低下・下痢がなくても吸収能力の不足から抵抗力の低下につながっていきます。

 中国漢方では、冬の風邪と夏の風邪は、症状も違うし原因も違うので、一口に風邪といっても、お勧めする薬は違います。違いの特徴は、冬は皮膚表面の毛穴が閉じて汗をかけないので温めて汗を出して邪気をはらいます。夏はそこが弛んでしまって、汗とともに抵抗力の元の正気まで出てしまうので、強い発汗作用のある葛根湯などは慎重に使わなければなりません

 このタイプの夏風邪なら、■香正気散(かっこうしょうきさん)がお勧めです。ムカムカしてだるくて辛い症状がみるみるとれて喜ばれています。「勝湿顆粒(しょうしつかりゅう)」という名前で輸入されています。

 おなかの痛い下痢の場合に、板欄根(ばんらんこん)が勧められます。この薬草は、サーズにも新型インフルエンザにも効果が期待されている、抗ウイルス作用のある薬草です。「板欄茶」として輸入されています。

 いずれにしても、冷房を避けられる時間があったら、気持ちのいい汗をかくようにする。冷たい飲み物をダラダラ飲まない。夜は11時前に寝る。このような点に気をつけて夏を楽しく過ごしてほしいものです。キーワードは「ドリンク、氷り抜きでお願いします」です。

■→草冠+霍 (日本語の標準パッチに入っていない字です。)


膝の痛み

 梅雨に入って冷たい雨が多くなると膝の痛みに悩まされる人が多くなります。日本はアジアの東端にあって、緑が多くおいしいお米が採れますが、そのかわり、梅雨の時期は湿気で悩まされます。追い討ちをかけるように、クーラーの冷気で膝ばかりか肩や腰の痛みを感じる人も増えます。

 中国漢方では痛みの質や痛む時期や冷えや熱など具体的な症状から原因をつきとめて、体質別の処方を提案します。

 痛みの程度が強い場合、口唇や舌の色が黒ずんで舌の裏側の血管が太くなっていることがあります。動き始めが痛く少し動くと楽になります。朝起きたてはすぐに動けません。血の滞りが原因と考えられます。極度のこりや運動不足がその原因と考えられます。昔なら蛭(ひる)を患部に乗せて血を吸わせたこともあります。現在は瀉血(しゃけつ)といって皮膚を傷つけ吸引します。黒い血が抜けると楽になる場合がみられます。飲み薬では疎経活血湯(そけいかっけつとう)を勧めます。

 力が抜けるような、痛いというより力が入らない感じの場合、耳鳴りや記憶力の減退もあります。「しょうがないやねぇ・・歳のせいだから」といわれるケースです。動き始めは楽ですが少し歩くと辛くなって、少し休めば楽に動けます。夕方悪いことが多いです。五臓六腑でいう肝や腎の衰えと考えられます。温水プールで歩いたりして優しく鍛える必要があります。杜仲の木の皮や黒ゴマで薬酒を作って飲むのも効果があります。独活寄生湯(どっかつきせいとう)がお勧めできます。日本には独歩丸(どっぽがん)として輸入されています。

 重だるく、動かしにくく天気予報のように雨の前はよけい辛い場合、舌の引き締まり方が弱く歯の跡がついていたり、舌の上に白い苔が付いていたりします。体臭や口臭も気になります。お灸や電気温熱などで乾かしてあげると楽になります。水分のとりすぎに気を付けましょう。養生と思ってハトムギをご飯に一つまみ混ぜて炊いて食べるのも良いでしょう。麻杏■甘湯(まきょうよくかんとう)を勧めます。

「漢方薬だから・薬草からできているから・他の人が飲んだら効いたので、自分も長く飲めば効くはずだ」と思ってもあてはずれの薬を長く飲んでも効果は期待できません。痛みの状態や舌の色などきちんと相談をして専門の医師または薬剤師から薬はもらってほしいと思います。

■→草冠+意 (日本語の標準パッチに入っていない字です。)


がんの漢方治療について

 最近の研究の結果、がん細胞は毎日すくなくとも三千個できていて、それを本人の免疫の力でやっつけているから、がんが育たないことがわかってきました。さらに、ひとつのがん細胞が人体に影響をおよぼすようになるまでには、15年近くかかることもわかってきました。がんは生活習慣病のひとつだという説にもうなずけます。

 がん予防にしてもがん治療にしても、一番大切なことは高価な健康食品を飲むことではありません。患者さん本人が、それまでの価値観・生き方全体をひっくりかえすようなこころのありようを変化させることがなにより大切だと思います。次に病気と闘う本人の体質の改善が重要です。

 最近は、甘い飲み物を漫然と飲むケースが増えています。鉢植えの植物もそうですが、いつもいつも鉢の中の土が湿っていると根が腐ってしまいます。人間も胃袋にだらだらと水分を入れ続けると、「脾が湿によって健全な動きを失う」と中国医学では考えます。舌の上にヌルヌルした苔がつくのはその信号なので、擦り落としてもそのときに口臭が軽くなるだけなのでやめたほうがいいでしょう。

 舌に白い苔がついて、食欲が落ちているときは「六君子湯」を、めまいがするときは「半夏白朮天麻湯」を、イライラして舌の先が紅いときは「半夏瀉心湯」を勧めます。苔の色が黄色くて、便秘しているときは「茵■蒿湯」を、尿量減少しているときは「茵■五苓散」をなどを勧めます。よほど喉が渇いたとき以外は、食事の一時間前に湯飲みに一杯の白湯か番茶を飲めば充分だと考えています。食べ物を吸収する力が自己治癒力を保持する基本ですから。

 化学療法や放射線治療・外科手術によって治療することは、自分の領地に侵入した敵の軍隊にミサイルを撃ち込むようなものです。敵もやっつけますが自分の領民もたくさん傷付けることになります。自分の領民を守り、食糧を増産するような手助けはやはり漢方が良いと思います。補気薬・補腎薬の配合されている「参茸丸」が勧められます。

 現在、もっとも注目されているのが、「霊芝胞子」です。がんが限りなく増殖する酵素の働きを抑える働きによって、理論上はがんの進行を止める働きが期待できます。

キーワードは、生き直しです。

■→草冠+陳