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漢方と脳卒中予防

 漢方では、自然界の様子を人間の身体に当てはめます。樹に風が命中して、枝が大きく揺れる様子や折れて動かなくなってしまった様子を、「中風」と言ってきました。

 身の回りのストレスは、風に例えられます。処世術として大きな樹の影に居るのも風にやられない方法ですが、逆に日が当たらないという面もあります。樫の木の様に硬い木は折れることもありますが、柔らかい柳の枝は折れにくいと言います。過超なストレスを減らす一方、受け流すゆとりも欲しいものです。漢方では「抑肝散」「釣藤散」が勧められます。

 木に潤いを与えると折れにくくなります。「休む」という字は、人が木に寄り添う形を表したものです。機械に寄り添っても休まりません。漢方では「杞菊妙見丸」が、肝の血を補ってくれます。

 「心配」といって、自分の心のエネルギーを配り過ぎると、木の潤いが足りなくなります。「柏子養心丸」は心の血を補ってくれます。

 更にそれらの肝と心の血を補うのは、脾と腎です。飲食も食べ放題のように欲望を掻き立てられると胃腸を壊します。性生活も同じ様に少食を心掛けましょう。枝は一度折れると完全には元通りにするのは困難です。折れる前に工夫しましょう。


出産後の調子が悪いのですが・・・

Q:数年の不妊治療の結果、妊娠できて、無事出産までたどり着けました。ところが、出産後、お乳の出が悪いばかりか、疲れやすく、めまい・動悸、汗が止まらない、風邪を引きやすく治りにくい、悪露が止まらないなどで困っています。これからもお乳をあげたいので心配の無い漢方薬はありますか?(宮城 M子)


A:中国の友人が、日本の病院で出産した知り合いの日本人女性の見舞いに病院を訪れて、おどろきました。昼食にカレーが出ていたのです。中国では出産後は味の淡白なものを食べさせるのだそうです。産後一ヶ月は「坐月子(ざげっし)」と呼び、外の風に当たらないために、家から1歩も外に出でません。もちろん、アイスクリームや生野菜など食べないほか、冷たい水にも触れません。(もともと、食事は男性が作ることが多いですが)オムツ洗いも男性の仕事です。女性は、当帰(とうき)という薬草の入った鶏のスープを飲んで、お乳をあげるだけで、とにかく休んでいます。産後の養生の仕方で、母体の回復ばかりか、その後の健康を左右するわけです。辛いものを食べると「気」が昇ってイライラしやすくなると教えてくれました。

 ご質問の症状は、妊娠中に胎児を育てるために体力を極限まで使い切った状態(漢方で言う「気血両虚」の状態)になっています。日本で、乳汁不足にダンゴや鯉を食べさせるのはそのせいで、中国ではブタの足を食べさせます。この時期に病気になると、抵抗力が落ちているので、体の奥に病気が忍び込み、徐々に体力が回復しても奥に居座って慢性化しやすいと考えられています。特に、冷えや湿気による関節痛や腰痛には注意が必要です。

 日本にある処方だと「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」「四物湯(しもつとう)」が勧められます。中国で使われる処方は「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」という名前で輸入されています。

 とにかく、一に養生、二に薬です。養生にまさる薬はありません。不養生して効く薬はありません。


すぐ夏ばてしてしまいます。

Q:私はもともと暑いのに弱く、すぐ夏ばてしてしまいます。体がだるくなり息切れがしてしまいます。口が乾いてついつい冷たい飲みものに手が伸びて、食欲がなくなってしまいます。効果のある漢方薬はありますか?(太田 K彦)


A:現代の日本では、外気温の上昇と室内の冷房の温度差、そして冷たい飲食物の摂取が、大きな原因と考えられます。外気温のコントロールはすぐには出来ませんが、時には山の木陰で昼寝をしたいものです。

一日中冷房の強すぎる所にいる場合、風呂に浸かると固くなった身体が溶けるような気さえします.。風呂から出たらクーラーで冷やさず、自然の風で身体の中から自然の温度に戻す必要があります。自律神経系の安定に役立つと言われています。クーラーの利いた部屋にいると自然な汗をかけずに、冷えた乾いた風で皮膚の表面を乾かしてしまうので、皮膚の潤いがなくなってしまいます。

時には冷たいものも口には美味しいですが、氷ザクザクの飲み物は、胃の温度を下げて食べたものの栄養分を吸収しにくくして、体力低下につながります。昔の様に温かい麦茶を飲むとサラサラした気持ちの良い汗が出て肌が潤います。冷たい飲み物を飲むとべたべたした気持ちの悪い汗をかきます。

息切れ・だるさ・めまいがあって、舌の引き締まり方が弱い人は、気虚として「生脉散(しょうみゃくさん)」を勧めます。日本には「麦味参(ばくみさん)」という名前で輸入されています。軟便で食欲がなく、身体がだるく舌の表面にヌルヌルした白くものが付いている場合、脾気虚として「香砂六君子湯(こうさりっくんし)」を勧めます。

また、手足のほてり・だるさ。口の渇きがあって、尿量が減少して舌の赤みが強く表面の苔が薄い人は、腎陰虚として「知柏地黄丸(ちばくじおうがん)」を勧めます。さらに、顔ののぼせ・赤ら顔が気になる人には「滋陰降火湯(じいんこうかとう)」の変方の「涼血清営顆粒(りょうけつせいえいかりゅう)」を勧めます。

手足のほてり・焦燥感・不眠があって、舌の赤みが強く表面の苔が剥がれている人は、心腎陰虚として「天王補心丹(てんおうほしんたん)」を勧めます。

 いずれにしても、早朝涼しいうちに身体を動かし、酷暑の日中は無理せず午睡をとって、冷え過ぎていないスイカや緑豆(リョクトウ)の粥を食べるのも、夏を涼しく過ごす知恵と言えるでしょう。


高血圧と糖尿病と言われました。

Q:職場の健康診断が嫌いで、ずっと避けてきましたが、最近からだがだるく・疲れやすく・息切れ。めまいがあって、家族の勧めもあって、近くの医者にかかりました。高血圧と糖尿病と言われました。先生は食事や運動に気を付けて3ヶ月後の検査によっては、薬を続けて飲む様にいいました。なんとか漢方薬でそうならないようになるでしょうか?(前橋m夫)


A:私の経験から言うと、男の人の中には医者嫌い・薬嫌いの人が多い様な気がします。自分の身体を信頼するのは良いのですが過信するのはいかがなものでしょうか?せっかく現代医学の検査の技術が進歩しているのですから、身体に負担のかからないものであれば積極的に受診してみたらどうでしょうか?早期発見につながって病気の早期治療が健康につながるでしょう。

中国の漢方では「中西結合医」といって、現代医学の検査の結果を参考にして漢方薬を調合するやり方も増えています。私個人としては中国医学も名医の弟子になるくらいになれば、学校で学ぶ基礎とは到底想像もつかない深いものがあるので、あんまり手前で完成したくないという気持ちがあります。

M夫さんは、まず、家庭や職場での複雑なストレスを避けて、静かな環境でゆっくり静養するのがいいでしょう。頭で考えるのをやめて身体を充実させる様にします。動物を真似て「食べること」「休むこと」「寝ること」を大切にします。「寝食を忘れ」てはいけないのです。

その上で、八味地黄丸加減方を季節や体調によって飲み換えていくのは良い事です。春のイライラしやすい時期は「杞菊地黄丸」。夏の暑い消耗しやすい時期は「天王補心丹」秋の喉・肌の乾きやすい時期は「八仙長寿丸」寒さの冬は「八味地黄丸」と言う様にです。

「牛黄清心丸」「降圧丸」という処方があり、血圧を実際に下げる効果が確認されています。前述の生活調整と体質改善の漢方薬で間に合わない時に初めて使うべき薬だと思います。前述の体質改善の処方は身体の生命力を助ける薬です。長く飲むことが不老長寿につながります。後述の処方は、薬が身体に働いて血圧などを調整する薬です。漢方と言えども身体が薬に頼る関係になっていることを理解して、現代医学の薬の様に続けて下さい

生活のゆとりを忘れていませんか?

 雨の朝、いつもの川沿いのアカシアの並木の散歩道を歩いていた。ふと見ると、そこにカタツムリがいる。危うく踏み潰すところだったので、近くのあじさいの葉の上に乗せてあげた。カタツムリは私の指から葉に何事も無かったかのように、背中に荷物を背負って、角をのびのびと伸ばしながらなめらかに葉の上を滑っていった。

 子供の時は、水溜りにヒバの葉っぱを一本ずつ投げ入れては、葉の根本から染み出す油で葉が動くのを飽きずに見ていた。時間はゆっくりと動き、水面に広がる不思議な七色の虹は二度とない模様をいくつもみせてくれた。

 毎日患者さんの漢方相談を受けていると、患者さんの生活の中にうるおいやゆとりが少なくなっているような気がする。毎日忙しい忙しいと肩をいからせて、不機嫌そうに飛びまわる。生活を便利にするために一生懸命働いて、手にした車やパソコン。それらを手に入れることで、なにか大切なものを手放してしまったのではないかと心配になる。

 気功は、決められた動作や呼吸をして、自然の「気」を奪い取ることではない。人を押しのけて幸せを求める「我」を離れること。小さな命にもイヤな相手にも、自分が持っているのと同じ「我」があることに、気功は気付かせてくれる。その時、本来持っている自己治癒力が扉を開けてくれるような気がしてならない。お腹の底から息を吐こう。その時に肩の力を抜こう。そして、あなたのまわりに微笑みかけよう。きっと、宇宙の全てがあなたに微笑みかけてくれるでしょう。


高校二年になる娘について相談です。

Q:高校二年になる娘について相談です。この四月から学校へ行きたがらなくなり、ここ3週間は行っていません。聞いてみると、昨年から学校へ行く時になると吐き気や下痢・腹痛があったといいます。日中はなんとも無く生活しています。漢方で良いお薬はありますか?(T市 T代)


A:朝起きにくく、気分がすぐれず、やる気が起きなくゆううつ・・。見ている親御さんの方が「ゆううつで胃が痛く」なってしまいますね。まず、少し離れていても「小児心理」を専門にしている評判の良い先生を探してみましょう。良く話を聞いてくれて、本人が続けて受診を希望するような先生と巡り合うことが必要です。

  漢方では、単純に下痢止め・腹痛止めの薬としては「ゲンノショウコ」などが昔から有名ですが、胃腸虚弱からの腹痛下痢ではないので効果はまず期待できません。また、中国の文献をみると舌の先が赤くただれた様になっていて、イライラの強い場合の胃痛・吐き気「黄連解毒湯」を薦めていますが、日本人はそれほど感情を外に現わさないのでよっぽどの急性期でなければ適応ではないでしょう。逆に、同じ「吐き気や下痢・腹痛」でも舌の赤みが薄く、吐瀉物は透明で臭いが少なく、全身(特に腹部)の冷えを訴えて暖まりたがる場合「真武湯(しんぶとう)」は使われますが、質問のケースには当てはまらないと思われます。

 質問のケースは、ストレス反応から来ていると考えるのが順当ですから、「肝脾調和」を目標に、保険範囲では「加味逍遥散(かみしょうようさん)」を薦めます。肩こりが強く舌の苔が薄い場合「抑肝散(よくかんさん)」。頭痛もあり舌の苔が厚い場合「釣藤散(ちょうとうさん)」。保険外では「開気丸(かいきがん)」を薦めます。

 母親と父親もしくは母親と祖父母の関係に問題があり、それが、娘に投影されていると思われる事例を数多く経験しています。適切なカウンセリングと指導の出来る機関が機能してくれる事を希望します。


「気功」が病気治療に効果?

Q:最近テレビや新聞の折り込みに「気功」と言う言葉が出てきますが、病気治療に効果があるのですか?(A村 Y男)


A:気功とは一言で言って「入静(にゅうせい)」といって、座禅を組んだ時のような、心の状態になる事です。「恬淡虚無(てんたんきょむ)」(こころがおだやかでなにものにもこだわらない)に浸ることです。

 いろいろな種類の気功があります。テレビでよくやっている「ビックリ人間」のような槍でも喉が切れないのは、「硬気功」と言います。意念(いねん)で人の身体は変化しますが、それを武術に応用したり、民衆に最も分かりやすくアピールする方法です。他に被験者に触らないのに動かしたり突き飛ばしたりは「外気功」と言います。中国で気功といえばほとんどが、動かない気功「静気功」。決められた動作をする「有意動功」。身体にまかせた動きをする「無意動功」など、自分でする医療気功です。三千とも五千とも流派があり病院や公園で指導者について指導を受けます。

 むかし、外国人が「日本人は皆柔道や空手の名人だ」と思うのが、思い込みであるのと同じで「中国人が皆太極拳や気功の名人だ」と思うのは思い込みです。現代医学的な表現をすると、大脳新皮質や前頭葉が優位だと、人間的な知識の世界。旧皮質、間脳とくに視床下部は感情・自律神経系の動物の世界だと言われています。気功は前者の過亢進を休め、後者の働きを活発にし、バランスをとります。「身体には三十七億年の生命の情報が詰まっている。身体に教えてもらってください」「身体の声に耳を傾けて」「森の妖精が耳元で囁き気付かせてくれる」と言うのはそのためです。その結果、自己治癒力・免疫の安定によって病気の予防・治療・老化防止に役立つことは、いろいろな研究でまちがいないことだと言われています。

 日常の雑念や緊張から解き放たれ「朝露が一筋の草の上で輝く、その光に吸い寄せられるように見入る幼心」を取り戻し、今ある命を悦び感謝できる肯定的な気持ちに全身の細胞がなってくれます。中国の朝の公園は、緑の中の学校であり、病気予防ばかりでなく病気治療のためにも開かれた病院になっています。この医療費をかけずに健康増進をする方法に、民衆が自発的に取り組んでいます。日本でも、自分たちの健康について、他人や医療専門家・テレビなどの健康情報だけに任せきりにせず自分たちで助け合いながら守るしくみができたらと思います。

断食の勧め

 雪が溶けて利根川の水が増えた。ひばりが鳴いて、風に湿り気が増え、夕焼けの色もどことなくのほほんとしてきた。コンビニへ行けば人気のある食べものがあふれている。欲望のままに「ランチ巡り」 「食べ放題」で食い散らかしている。食物連鎖の頂点に立つ人間は、傲慢になっていないか。

 その昔「採取生活」をして地球に食べさせてもらっていた人間は、「農耕・牧畜」で地球を食べ始めた。菜食のはずの牛に同種の動物を食べさせ、鶏を金網に閉 じ込めて、クイモノにしてきた。漢方薬もそうだ。人間の不摂生を治すために薬草は生えているわけではない。断食をすると、身体が食べ物を求めてきしむ。今までどれだけ何気なく食べていたか を身体が教えてくれる。食べる悦びの影に、食べなければ命をつなげない悲しみが同 じ大きさ隠れていることに気付かせてくれる。一瞬一瞬が光り輝く限りあるものだと言うことに気付かせてくれる。そうでもしなければ、理屈では永遠に命があるわけではないことは知っていても、頭の中はテレビから流される物欲や名誉欲にまみれてまるで「蜘蛛の糸のカンダダ」のようだ。

 帯津良一先生に「虚空」をおしえていただいた。そんな大きな気持ちになったら、自分ばかりが正しくて相手が間違っているとしか思えなかった自分が小さく見えた。がんは自分の中にできた敵ではない。「がんも身のうち」。進行や再発を恐れて大切な時間をごみ箱に捨てるのはよそう。自分に預けられていた命を返却する日まで、自分の命の悦びを家族や友人と分かち合えば、そこであなたの命(愛)が途切れるはずが無い。川の流れのように・・。


父親が、肺がんの診断を受けました。

Q:73才になる父親が、肺がんの診断を受けました。もともとあまり医者にかかる方で無かったからか、本人は検査を受ける途中からこんな思いをするくらいなら家で寝て居たいと言うようになりました。たまたま、病院での治療も身体に負担の大きいもので、本人は漢方で何とかしたいと言っています。がんは漢方で治りますか?(前橋 T代)


A:がんはまもなく3人に一人はかかる病気ですし、亡くなる原因のトップで、年間30万人の方が亡くなっています。がんで亡くならない方が少ない、老衰で死ねるのは百人に4人とも言われています。

 ご質問ですが、残念ながら治りますとは断言できません。少なくとも、何よりも大切な本人の自己治癒力を高めて、延命に貢献することは間違いないと言えます。現代医学の研究で、「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」の効果は広く認められています。大学病院でも術後の回復を助ける、放射線治療や抗がん剤の副作用止めとして現代医学を専門にしている医師で知らない先生がいないと言って過言ではないでしょう。ただ、「証(しょう)」といって体質から薬を選ぶ手続きをもっと大切にして欲しいと訴えている先生が多くいるのも事実です。

 痰のからまない咳が続き、寝汗をかく「陰虚(=身体を潤す力が不足している)」の患者さんに、先ほどの処方がかえって症状を悪化させるのは、体質に合わないからです。薬に毒があるのではありません。また、「はとむぎ」など安価な身近な食べ物にも抗がん作用があることが、以外と知られていません。

 先日、川越の帯津良一先生とお話をする機会に恵まれました。「群馬からおいでになっている患者さんには、気功を教えてもらいなさい、と帰しているんですよ。」とおっしゃっていました。現在私の関わっている気功の会は満員です。伊丹先生の「生きがい療法」も取り入れ笑いが絶えません。病気を人任せにせず自分でコントロールしていこうという患者さんが増えているのだろうと思います。


病気と和解しよう、老いを受け入れよう

 正月に落花生を食べていたら、歯がかけてしまった。歯医者さんの椅子で口を開けて天上をにらみながら考えた。最近本を読むのが面倒になったのは、「老眼はまだ軽いですよ」と言われてかけためがねで、文字が驚くほどはっきり見えたのと関係があるかもしれない。めがねをかけて、自分の手の皺が思いの他深く刻まれているのに驚いた。きっと、顔には気が付きたくない染みもあるだろう。

 先日、「ベトナム老人はなぜ元気なのか」という本を読んだ。副題の「東洋式老いの技法」に興味を引いたからだ。ベトナムの小児科医が著わした内容は「今この瞬間の与えられた幸せに気付き悦び感謝しよう」ということがフランス(領だったから)の味付けで語られていた。「老人には老人が自分を肯定して生きるスタイルがあるものさ。」

 アメリカの白人社会を中心に(日本でも)、能率・スピードなどに物事の価値が偏っている。そのため、老人が実際の年齢よりも若く見せるために美容整形しサプリメントを飲む。しかし、本来の東洋では古い絵画・古い街路が尊ばれるように、静かにゆっくりと濃密な時間を刻み込むように歩き話す。男ならあごひげを撫ぜたりハゲ頭を撫ぜたりしながら・・。

 テレビでは、健康番組が流行して、これを食べろあれを飲めと朝から晩までまくし立てている。わずかな不快症状を大きな不安に育てて眉間に皺を寄せさせる。心の寛容さを吹き飛ばし、慌てさせる。

 歯が一本ずつ使用期限が過ぎていくように、私の身体の彼方此方で命の終わりが始まっている。(もうとっくに、賞味期限は切れているが・・)

 病気になったり年老いるのは、恥ずかしいことでは無い。むしろ、価値が無いと思う智恵の無さを恥ずべきだろう。一枚のセピア色の写真をぼやけた目で見て、その時の風や花の匂い・ぬくもりを思い出して幸せを感じられるのは、刻んだしわのお陰かもしれない。病気を持ちながら幸せを感じられる・避けようの無い死を意識しながら今の生をより一層互いに大切にできる、東洋の老人になりたいと思った