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インフルエンザにかかって思ったこと

 03年3月末、花粉症かな?と思っていた咳が、突然、発熱・倦怠感・節々の痛み・ふらつきに展開しました。9度近い熱の中、うなされながら考えたことをつれづれに書き残してみます。

 まず、身の置き所がないので、右を下にしたり左を下にしたりしていて思い出したのが、幼少の頃の事です。病弱だった私は、熱を出すと一人で天井の木目が唯一の遊び相手でした。大人になってから「正岡子規」という人のことを学びましたが、想いはつながる気がします。

 どうもこれはインフルエンザじゃないかと思い始めてから、「タミフル」を飲むかどうかを熱でぼやけた頭で考えました。割と多くの患者さんが吐き気と下痢を訴えていました。自分は東京時代に腸を壊した。今でも油が合わないと腹痛を起こすのでインスタントラーメンは食べられません。重篤な副作用も報告されています。

 さらに、患者さんで、胃がんを10年前にやっている人が「井上さん!私は漢方だけで熱を乗り越えましたよ」言っていたのを思い出していました。一方で、「井上先生は寝てられるけど、主婦は寝ていられないから飲むのよ」とも言われました。結局、タミフルで自分の身体が学習するチャンスを無駄にしないほうが言いという判断で、飲みませんでした。

 そうすると、漢方で抑え込むと言う方法もありますが、それも現代医学とあまり変わらないと思えてきました。結局、漢方の銀ギョウ解毒丸も飲まない事にしました。ひたすら、自己治癒力に頼りました。自己治癒力を助けるためといって「リ○デー」などに手を伸ばすのでなく、食べたくない食事はせずに湯茶を飲んで、自己治癒力の邪魔をしないことにしました。

 乱暴な結びつけですが、(熱に浮かされて)防菌・防臭グッズが氾濫することで「自己臭恐怖症」が増えるのだろうと思いました。授業中に、おなかが鳴るのは、笑い飛ばしていましたが、今では一大事です。極端な話、虫が食べると虫を殺すDNAを持っているトウモロコシが口の中に入る時代を、大人たちが作ってしまいました。昔の人たちは、人間的な労働と人間的な休息の中で、家族・隣人たちと安定した関係を保ってきました。いまは、非人間的な労働非人間的な娯楽(テレビ・パソコン・ゲームなど)によって、家族・隣人関係が極めて薄くなってしまっている。森から引き離されたゴリラやチンパンジーたちが、仲間づくりに始まって、交尾・子育てに至るまで、自然な感情を失ってしまっていることは、広く知られています。

 最近のネットで集団自殺をしてしまう風潮に近い印象を受けています。中国医学で言う「扶正去邪」は自然と闘う姿勢のような気がします。むしろ、「調和陰陽」「陰陽協調」といった立場が「風邪の効用」に著されている、姿勢のような気がして、年をとったらそちらになじんできています。そんなことを、熱に浮かされながら、神様がくれたお休みとして、頭を巡らせていました。


SARS「新型ウイルス」が心配です。

Q:いま、世界で恐れられているSARSですが、現代医学では特効薬がないと言われていて、万一日本に入ってきたときには、とても心配です。中国では漢方薬を奪い合っているとテレビで報道していましたが、ゆっくり効く漢方薬で効果が期待できるものはあるのでしょうか?
A:確かに、中国を中心に「新型ウイルス」が猛威をふるっています。中国では「非典(フェイティエン)」といって、典型的な肺炎ではないという意味だそうです。いま、漢方の専門家の中でもいろいろな意見が出されています。中国の衛生部や一流の漢方の病院から提案されている薬草については後で報告するとして、私の個人的な考え方を述べてみたいと思います。

 これまで、農薬の殺虫剤が効きにくくなっているとか、病院でMRSAなどという菌が伝染したりして、必ずしも現代医学が万能でないことはうすうす気が付いてきたと思います。人間が自然に対して「征服しよう」と戦いを挑めば、思いもよらない形でしっぺ返しを受けるでしょう。

 なにか予防的な意味がある行動をとるとすれば、自然な運動を増やし・不自然な食事を減らし・眠る時間を早寝早起きにすることからはじめるべきでしょう。パニックになる必要はありません。体力の落ちた状態であれば発症する可能性は当然高まります。不摂生をしていても感染しないと言う便利な薬を期待すべきではないという事をしっかり身につけるチャンスです。

 SARSの感染源などを調べるために中国広東省入りしている世界保健機構(WHO)調査団は,漢方医学を専門とする広州市内の病院を訪れました。調査団員のジェームズ・マグアイア氏は「漢方薬を使った治療法が効果を上げているという病院側の報告は注目に値する」と報告しています。

また、 中国国家中医薬管理局と北京市中医管理局が専門家の意見をまとめ,「非典型肺炎(SARS)の中医薬予防治療技術方案(試行)」を発表しました。

そのうちの一つを、紹介します。

蒼朮12g  白朮15g  黄耆15g  防風10g  *香12g
  沙参15g  銀花12g  貫衆12g 
  以上を煎じた後,1日2回,連続7−10日間服用する。

*草冠に雨冠、下がフルトリ。

生黄耆12g  銀花15g  柴胡10g  黄岑10g  板藍根15g
貫衆15g  蒼朮10g  生_苡仁15g  _香10g  防風10g  生甘草5g
以上を煎じた後,1日2回,連続10−14日間服用する。


日本で手に入りやすい処方としては、オウギという薬草を中心にした「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」、治療的に勧められているのが「板藍根(ばんらんこん)」「金銀花(きんぎんか)」を主成分にした「銀翹解毒丸(ぎんぎょうげどくがん)」です。

 これからも、自然をコントロールしようとすれば別の形の病気が生まれるような気がします。むしろ、自然に生かされている枠の中でどう調和していくかを考えていったほうが良いような気がしてなりません。


「証(しょう)」について

「証」
とは、簡単に言うと、患者さんが良く口にする「体質」のことです。「頭痛がしやすい体質」「肩がこりやすい体質」「胃がもたれやすい体質」「足が冷えやすい体質」などです。漢方では、この「証」を判断して「処方」を決定するので、治療結果にも大きな差が出ます。とても重要に考えられているテーマです。

現代医学にとっての、検査結果に基づいて決定する「病名」「症」に相当すると思います。現代医学で「病名」が違えば「治療法」も違うように、漢方で「証」が違えば「治療法」も違ってきます。

さらに、現代医学で言う「病名」「症」は、漢方にとって参考にはなりますが、それは決して必須条件ではありません。たとえば、「更年期障害症」と診断がつくと、標準的な治療法の中から「ホルモン補充療法」や「精神安定剤内服療法」などが(有機的な関係が無く)、選ばれているようです。漢方では「同病異治(どうびょういち)」と言って、一つの病名が決まっても、(証が違えば)それぞれ治療法は異なるのです。(逆に病名が違っても証が同じであれば同じ治療法を選ぶので「異病同治(いびょうどうち)」とも言います)

日本の漢方では、「証」というと「鍵穴に、鍵がピッタリ入るように」その体質に必要な「処方」があるといわれています。「風邪を引いて2〜3日で、風がふいてくると嫌がり、寒気がして、首筋がこわばる人」は「葛根湯の証」と言います。

しかし、そう言う考え方だと、人間は「ABOの血液型」で4つの性格に分けられる、という考え方と同じで、せいぜい百か二百くらいの「証」にしか分けられないということになります。昔の軍隊ではありませんが「靴に足を合わせる」事態も起こりかねません。(先に結果としての処方名入りの「証」が決まっているのですから・・。)

中国の漢方では、もう少し分析的です。「証」とは「その時の患者さんの病理的概括」です。「病変の部位(もちろん漢方的概念による上中下・表裏など)」「病因(内・外・不内外)」「性質(寒熱)」「邪気と正気の力関係」などを包括しての「証」(病症の概念)がワンステップあって、必ずその後にその病症に対応した「処方」が存在するのです。

項目として5項目あります。

<1、病人を弁ずる>

一般状況として、性別・年齢・体格・眼光・性格・生活や仕事の状況を知ります。

例えば、色白でムチムチしている人は「陽虚湿盛」といって、汗をかき易く息切れがしやすい、雨の前にからだが重く下半身の関節が浮腫みやすい、咳になると痰が絡みやすく、皮膚炎を起こすとジクジク浸出液が出やすい、おなかはあまり空かないが習慣で食べてしまうことが多い、便は軟らかい事が多く冷えると固い人もいる、眠りが浅く熟睡感が無く気分の良くない夢を見やすく目覚めも良くない、小便は出てもスッキリせず残尿感がある事もある、めまいや不眠を起こしやすい、男女ともに妊娠しにくいことが多い、などの事が想像できます。これが全て当てはまらなくても、舌の引き締まり方が弱く舌辺部に歯の跡がついていて、漢方で診る脉が「滑(かつ)」と言って、治療者の指の下でそろばんの玉を転がすような感じが認められれば、この体質の事が多いと思われます。

そういった見方のほか、自宅で老人の介護をしている、子供が受験期を迎えている、リストラにあいそうだとか、夫婦仲が悪いなど、様々な状況を読み取って参考にします。

<2、病位を弁ずる>

患者の主訴をもとに、病んでいる場所を考察します。急性疾患では、「六経弁証」といって、日本の漢方のバイブルである「傷寒雑病論」(前漢・張仲景)によって提起された証の建て方の一つで、外邪が外から中に向かって侵入して、冷えが熱に変わり又冷えに変わっていく過程を分析していく方法があります。たとえば、太陽病とは病邪が体表にあって、「発熱・悪寒・頭項強痛」を主症状としています。順次、少陽病・陽明病・太陰病・少陰病・厥陰病というふうに分けています。更に、清代になってそれまでの「傷寒雑病論」の考え方では説明できない症型が見られるようになり、葉天士が「温病(うんびょう)」という概念を世に問いました。「衛気営血弁証」といって、衛分・気分・営分・血分というように熱性疾患を説明しています。

また、慢性疾患で病位で分ける場合「三焦弁証」を用い、横隔膜から上の上焦、臍までの中焦、その下の下焦に、分けて主訴がどこにあるかを分析します。

<3、病因を弁ずる>

多くは、「六淫弁証」を用いて説明しています。自然界には、六気といって六の自然要素があります。風・熱・湿・燥・寒・暑です。これらが、正常範囲を越えて人体に悪影響を及ぼす状態になった時に「六淫」と言います。夏ばては「暑邪」によりますし、気管支拡張剤で鎮まりにくい痰の絡まない乾いた咳は「燥邪」によるものとして分析します。

<4、病態を弁ずる>

主に、上記の弁証をまとめ、「八綱弁証」に整理し、「気血弁証」「臓腑弁証」「経絡弁証」などに結び付けます。八綱とは、表裏・寒熱・虚実・陰陽の区別です。たとえば、「臓腑弁証」で、肝について分けると、「肝気欝結」「肝火上炎」「肝陽上亢」「肝血虚」「肝陰虚」「肝風内動」「寒滞肝脉」などがあります。

<5、病機を弁ずる>

病機とは、病理と言いかえる事ができるかもしれません。漢方の見方で疾患が発生して変化していく過程のメカニズムを言います。たとえば、恋愛をしてあまりに思いが強くなると「脾気を破り」食欲が無くなります。食べられなくなると「水穀の精微を運化」ができなくなり「心神を養う」事ができなくなり「心血の不足」が生じて不眠になります。「心陰の不足」が生じれば、のぼせや口内炎ができるし、「腎陰の不足」が生じれば、足のほてりが現われます。

「上工は未病を治す」とは、先見の明のある力のある人は、疾患の趨勢を予測して伝変の予防のために、予見的な治療を施す事ができて患者の痛苦を軽減できるということです。

漢方で言われている「証」ということについて、もっと深く知りたいというお話を受けましたので、概論的にまとめて紹介してみました。中国には、以前は「中医学院」今は「中医薬大学」という教育・研究機関がありますが、そこで学ぶ内容の紹介程度にはなっていると思います。20年前に学生たちが朝は明るくなるのを待ち、夜は幾つかある街燈の下で熱心に教科書を暗記している姿が思い浮かびます。教科書を全部覚えても、一人の患者さんの前に立つ時、尚自分の勉強不足を悔いるという言葉があります。私にとっても毎日が勉強の連続です。

読者の方々の今日の命の歓びを祈り、編集者のご苦労に感謝してこの項を閉じさせていただきます。


不眠に良い漢方はありますか?

Q:今年の3月の初め頃から、不眠に悩んでいる49才になる主婦です。寝よう寝ようとすると余計焦って眠れません。やっと寝つけても、眠りが浅くいつもウツラウツラしながら考え事をしています。挙げ句の果てには、明け方に怖い夢を見て目が醒めてドキドキしながら明るくなるのを待つ始末です。もともと神経質ですが、こんな私になにか効果のある漢方薬はありますか?(沼田 o子)



A:現代人の生活は効率を優先するあまり、せわしないものになってしまい、生活そのものを楽しむ事が難しくなっているといわれています。夜11時になってから食事をして2時を過ぎてからやっと布団に入るというサイクルだと回復は遠いような気がします。
この患者さんは、いくつかの精神科の医院や病院で治療を受けましたが、眠れても翌朝頭がスッキリせず薬が残っている気がして漢方で治したいとの相談でした。
漢方では、「意識」に当たる「神」が、夜になると「心」に戻って人間は眠るのだと考えています。「神」が「心」に入れないので眠れないのだと言います。(「神」などと書くと胡散臭い感じがするかもしれませんが、われわれ日本人が何気なく使っている「神経」「精神」という言葉も、もとの意味を研究すると深い意味が秘められていて、興味深いものです。)
体質に合った漢方薬に巡り合って、気持ちの良い睡眠を得られているケースが多く見られています。
舌の色が紅で、焦りやすく動悸があり、寝汗をかきやすい場合、「陰虚内熱」として「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」を勧めます。さらに足のほてりや夢が多く物忘れが激しく精神の集中力がなくなった場合、「心腎陰虚」として「天王補心丹(てんおうほしんたん)」を勧めます。
舌の色が紅で表面に黄色いヌルヌルが付いていて、わき腹が張ってイライラしたり不安になったりやすぐに怯える傾向がある場合、「肝気不疏」「心神不安」として「柴胡加龍骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」を勧めます。舌の上に黄色い厚い苔がつき、むかつき・めまい・動悸・夢が多いなどの症状があれば「湿熱内停」として「竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)」を勧めます。
舌が淡い色で引き締まり方が弱く多夢・疲労倦怠感・食欲不振・下痢などがあれば「心脾両虚」として「帰脾湯(きひとう)」を勧めます。
これらに「加味逍遥散」などを朝一回組み合せると全体の気の巡りが整って、臨床的にはより効果が高いようです。
日常生活では、夕食はなるべく軽めにします。また、興奮する討論や刺激的なテレビからは遠ざかりましょう。また、繰り返し言われている事ですが、寝る事にこだわらず横になっているだけで疲れが取れるだろうと、力を抜くことも大切なような気がします。


頭痛を漢方で治せますか?

Q長年の頭痛で悩まされています。脳外科の病院で検査しても何も問題無いといわれました。その都度強い薬を飲むのも心配です。生理の前に痛くなる事が多いので婦人科に行きましたが、出されて薬で吐き気がして怖くてやめました。漢方で元から治せるような良い薬はありますか?(高崎・34才)



A:中国で「患者さんが頭が痛いと、お医者さんも頭が痛い」という言葉があるくらい、頭痛の種です。現代医学では、それぞれ各科で原因を探すのでしょうが、漢方では一通り大きな網で原因を探します。(中国では専門分野に分かれていますし、最近は日本でも得意不得意はありますから、相談する時に聞いてみると良いでしょう)漢方ではまず、「表裏」といって急性と慢性に分けて考えます。急性の場合、脳血管障害なども考えられますから、専門病院に受診をお勧めします。原因がつかめなければ、「風(ふう)の邪気(じゃき)」が頭の表面を襲っていて身体がそれに抵抗していると考え、「川弓茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)」をお勧めします。
慢性の場合、手足の冷えと頭頂部の痛みであれば、「寒の邪気」として「当帰四逆加呉茱萸生姜(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」というお経のような処方が勧められます。また、肩こりがあってコメカミが痛い時は「釣藤散(ちょうとうさん)」が効果がある場合が多いようです。
更に、頭が重くてスッキリせず口臭がして舌の表面に白いヌルヌル(漢方では苔と言いますが)がついている時は、「半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)が第一選択になります。
ご質問は生理前の頭痛ですが、生理中の頭痛は「実」として、舌の色や経血の色が黒ずんでいたり塊が下りるようなら、今良く言われる血の巡りが悪いことも考えられるので「弓帰調血飲(きゅうきちょうけついん)」を勧めます。ご質問の生理前の頭痛は「虚」のことが多いので、舌の色が淡くて引き締まり方が弱ければ「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」や「海馬補腎丸(かいまほじんがん)」をお勧めします。


衛益顆粒は、免疫力アップのカギ

毎年繰り返されるニッポンの行事になってしまった「花粉症」と呼ばれるアレルギー性鼻炎。中には、くしゃみ・鼻水・鼻づまりだけでなく、目のかゆみ・喉の痛み・皮膚の炎症まで起こす人が増えてきました。同時にアトピー性皮膚炎・喘息の患者さんは症状を悪化させます。そして、生活上様々な場面であふれている化学物質に過敏に反応する患者さんが爆発的に増えています。シックハウス症候群もその一例です。
これらの原因が、夏寒く冬暑いエアコンの影響、九時に夕食を摂り二時に寝るといった夜型の生活、さまざまな化学物質の氾濫、社会生活の複雑化によるストレスなどが大きく作用していると行っても過言ではないでしょう。
 中国漢方で、「異病同治」という言葉を良く使います。外見上異なった病気でも、根本原因が同じであれば、同じ治療をする、という意味です。今増えているそういった過敏症の直接の原因は、ここのところ話題の免疫力の低下によると考えられます。
 免疫とは、疫(流行り病)を免ずる=一度かかった病気に二度かからない、という意味から作られた言葉ですが、外敵と味方を区別して外敵をやっつける働きのことを言います。敵を発見できなかったり、敵を攻撃する力が弱かったりするのは、抗がん剤などの使用により感染症に罹りやすくなる、免疫低下です。逆に、敵と味方を混同たり、攻撃しなくても良い相手に攻撃をしかけてしまうのは上記の過敏症のような免疫過剰の反応です。両方とも免疫調整機能の低下と言う事で、免疫力の低下と言われています。
 中国漢方では、こういった免疫力の低下を「衛気不足」と表現します。皮膚や粘膜(呼吸器官・消化器官・泌尿器官も含めて)を通して病気が侵入しないように護ってくれる力です。中国漢方では「未病先防」といって、病気になるのを待って病気を治すのでなく、病気に罹りにくい身体を創ることにも力を注いできました。夏、朝日と共に起きて太極拳やスポーツに興じ、昼は木陰で昼寝をし、夕涼みに友人とおしゃべりをしながら散歩する。冬はあたたかい煮込んだ穀物中心の食べ物をゆっくり食べて、早寝・朝寝坊を楽しみます。これらと全く逆を行く日本の習慣は病気を作っているとしか言いようがありません。
 日本で、一番有名な漢方薬と言うと「朝鮮人参」ですが、これは「補陽」の薬で、元気を出す働きは強いですが、興奮させたり逆上せさせたり血圧を上げてしまったりする場合もあるので、一般の人が好むほどは勧められません。むしろ、「補気」という目的なら「黄耆(おうぎ)」のほうが、中国では有名で、安心して使われます。
 「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」は、玉でできたありがたい屏風(びょうぶ)で身体の回りを護る処方という意味です。内容は黄耆・防風・白朮です。これは、補中益気湯や補陽還五湯などの「補気薬」の土台ともいえる処方です。
 衛益顆粒は、「玉屏風散」の製剤ですが、超一流の材料を使っている点で、他に類を見ない卓越した治療効果を上げています。内蒙古産の黄耆・湖南省長寿鎮産の白朮・黒龍江省産の防風、いずれも漢方の臨床家なら喉から手が出る薬草です。
 薬理研究でもIgEの異常上昇を抑えるという従来の免疫安定の作用ばかりでなく、IgAの生産を高めるといった一歩前に出た予防的な働きが確認されています。
 アレルギー性鼻炎だけでなく、ちょっとした温度変化で風邪をひきやすい、冷房による冷えで身体がだるくて何も手につかない、慢性ジンマシン、アトピー性皮膚炎・尋常性白斑・強皮症・単純疱疹などの「気虚タイプ」の人、さらに、脳梗塞の後遺症としての、半身不随・筋力の低下・感覚の麻痺・異常な感覚(しびれなど)に対して、活血薬と合わせて使われます。
 現代はさまざまな疾患があふれています。病気になる前に健康を増進する考え方を採り入れて、楽しい毎日を過ごそうではありませんか。

漢方で勧められるダイエットの薬はありますか?

Q;32才の独身女性です.2年前から太りだして8キロも体重が増えてしまいました。週刊誌のダイエットの宣伝を見ていくつかの
ダイエット食品を試しましたが、効果が見られません。漢方で勧められる薬はありますか?(大胡町 T子)



A:女性週刊誌を見ると「ダイエット」と「豊胸」の宣伝で一杯です。一方で、世界中で毎日数万の子供たちが餓えて死んで行っています。大人達が殺し合いをやめないからです。一方で、物が溢れている都市では、心の寂しさを埋めるために脂の食べ物やアルコールを口に運び、運動不足とあいまって肥満からの生活習慣病に苦しんでいる人々が増えていると言われます。
「ダイエット食品」と呼ばれるモノの中には「漢方」と表現しているものもありますが、「漢方」に使われる一部の材料としての薬草が、「漢方の理論」抜きにただ合わせられているものがほとんどの印象があります。しかも、その薬草は極端な利尿作用や寫下作用などで、無理に痩せさせようとするケースが多いようです。強引なダイエットによって、体力や免疫力の低下も心配されます。
中国漢方の考え方では、
心身の調和を整える事を目標にします。不安やイライラを軽減する事で、ついつい間食をしたりドカ食いをするのを防ぎます。新陳代謝を活発にして基礎代謝を高め脂肪分の燃焼を早めたり、ムクミや便秘を整えることが大切と考えています。
更に、女性の場合、生理が不順だったり、経血のなかに「塊」があったり、オリモノが多かったりというのも、ひとつの信号であったりします。それを調整したら肥満が解消していたと言う話を良く聞きます。
繰り返しになりますが、「痩せるために人生がある」のではなくて、人生を自分のものとしていきいきと楽しむ中で、モデルのように痩せている事に価値がない事に気が付いてくれるといいなと思っています。
* 加味逍遥散(かみしょうようさん)ストレスからつい食べ過ぎてしまう人に勧められます。
* 防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)疲れやすく・汗をかきやすく・足がむくみやすい人に
* 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちの人に
* 三爽茶(さんそうちゃ)皮下脂肪の燃焼を早めると注目されています。


花粉症に効果のある漢方薬を教えて下さい。

Q;
5年ほど前から花粉症で悩んでいます。春になると突然くしゃみ鼻水で仕事にも支障が出ます。夜は夜で鼻詰まりで、眠れない始末です。ひどい時は喉が痛くなり、目も痒くなって困っています。病院に行って薬をもらいましたが、眠くなって続けられませんでした。漢方では効果のある薬はありますか?(宮城 M雄)



A:アレルギー性鼻炎や眼炎は、15年ほど前から患者さんが増えてきています。花粉ばかりでなくディーゼルエンジンの粉塵や家庭内の芳香剤や電気蚊取り線香などの農薬など、アレルギーの原因になると思われる物質は、どんどん増えています。
現代医学では、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の内服や副腎皮質ホルモンの外用剤などで、症状を抑え込んでこの時期を切り抜けるのが標準的な方法と聞いています。
漢方では、有名な「小青龍湯(しょうせいりゅうとう)」のように症状を抑えるものもありますが、「肺の衛気を補う」という方法で体質改善を期待できる処方もあります。それは「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」という処方です。外気温の変化(特に急に寒くなった時)について行けなくて人一倍寒く感じる、外気温の変化(特に急に熱くなった時)について行けなくて人一倍熱く感じ汗をかきやすい、身体を動かすと息切れがして疲れやすいというタイプの体質に使います。舌は引き締まり方が弱くて、歯の跡がついています。最近の薬理学的研究でも、この処方で、IgEの異常上昇を抑え、IgAの生産を高める作用が確認されています。言いかえれば、症状が出てから抑えるのでなくて、免疫力の強化に貢献し炎症を起こしにくくする働きが期待できると考えられます。これまで、保険範囲内の「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」で代用していましたが、「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」と言う名前で輸入されるようになりました。
しかし、やはり薬に頼り切りになるのではなく、夏にクーラーにあたりすぎない様にしたり、肌を鍛えるために乾布摩擦などを心がけたり、食べ物をしっかり良く噛むというのもりっぱな予防法です。更に可能なら一日に30分でも良いから速歩などの運動をして全身状態を改善してください。


漢方薬について教えて下さい。

Q:
漢方薬は自然な薬草からできているので、副作用はないと聞きましたが本当でしょうか?また、自分に合った漢方薬はずっと続けた方が良いと聞きましたがどうでしょうか?(宮城M雄)



A:漢方薬はおっしゃるとおり、自然の薬草の他鉱物や動物などからできています。鉱物では、紫水晶などが知られています。動物では、牡蠣の貝殻や古代動物の化石等が知られています。長く煎じると精神安定の働きがあって、昔の人は「カルシウムが精神安定に良い」と教えられなくても経験から身体を守る方法を身に付けていたんだと感心します。文字通り「漢方医薬学は人類の宝庫」と思います。
ところが、人間は自然によって生み出されたとは言え、自然は人間の都合の良いようにはできていません。例えば、「トリカブト」という毒草があります。まちがってこの葉っぱを食べて亡くなった方は多く報告されています。自然だから安心という事は言えないと思います。この「トリカブト」の根を弓矢のやじりにつけてヒグマを狩猟していたのが、日本の先住民族のアイヌ民族です。さらに、古代の人はこの根を加工して強心作用や鎮痛作用を利用できるように工夫していました。現代人の貧しい生活力からは想像できないたくましい智恵を感じます。この根は「附子」と言って「八味地黄丸」などの処方の中に入って効果をあげています
ところが、この「附子」は無条件に身体の痛みを取るのではありません。身体に冷えを伴う人に使うものです。これを知らないで、「腰痛」に良いと書いてあるからと言って熱を伴って腰の痛みで困っている人が「八味地黄丸」を飲むと反って症状が悪化する可能性があります.
でも、これは漢方の方では「副作用」と呼びません。「誤治」と言います。薬が悪いのではありません。患者さんに合わない薬を勧めてしまう医療専門家の間違えです。たとえば、包丁で美味しい料理を作るのは良い事です。包丁を持って銀行に行ったら、使い方の間違えです。包丁は悪くありません。そう言う考え方です.薬の選び方が大切です。
薬をずっと続ける方が良いかというと、続けたほうが良いと思います。人間のからだは少しずつ衰えていきます。年老いていきます。これを少しでも遅らせて元気にいるには、食事でとりきれない部分を漢方薬で補うのはとても良い事と思われます。ただし、漫然と何年も前に合ったと言う薬を続けるのは問題があると思います。それは、体質は少しずつ変わると言う事を忘れているからです。体質が変われば必要な薬も変わります。また、細かく言えば、服が夏と冬で違うように「内服」する薬も変わるべきです。わかり切った事かもしれませんが、もちろん、薬さえ飲んでいれば不摂生をしても良いかというとそうではなく、摂生の次に漢方薬があることを申し添えます。お元気でお過ごしください。


成人型アトピーと皮膚科で診断を受けました。

Q:
成人型アトピーと3年前に皮膚科で診断を受けました。ステロイドの外用剤を様子を見ながら使うように指示されています。
知人に紹介されて何軒か他の皮膚科も回りましたが、芳しくありませんでした。今年の春に、
東京の漢方の薬局で相談したところ、「銀翹散(ぎんぎょうさん)」という処方のせんじ薬を勧められました。飲んでみると効果がありましたがなかなか東京まで行くのが大変なので、群馬でなんとか続ける方法はありませんか?(高崎 25才 女性)



A:首の周りと顔に皮膚炎が出来て、赤くて乾いて痒い、とのことです。この疾患は、時間を掛ければ快癒するケースが多いですから良いと思われることは、主治医と相談しながら探して行ってください。東京で良い漢方処方に巡り合ったという事ですから、向こうの先生に事情を説明して群馬の先生を紹介してもらうか、主治医の先生宛てに紹介状を書いてもらってください。漢方の分野では、チーム医療として医師と薬剤師が協力して一人の患者さんを治療していくケースは良くあります。
ところで、この「銀翹散」ですが、「温病条弁(うんびょうじょうべん)」という本に載っている処方です。昔は食べるものも質素で労働は厳しく寒さによって身体が傷つけられて病気のなる事が多かったのです。日本でこれまで使われてきた「傷寒雑病論(しょうかんざつびょうろん)」を中心とする処方はそのための処方と思われます。それに比べて、食べ過ぎ運動不足ストレスなどから血液がサラサラでないなど複雑な要因で病気になる事が近年増えてきました。それに対応できるようにと、漢方も中国国内で変化発展を遂げました。「温病(うんびょう)」という概念です。
それを使って効果を出しているという事ですから、相当経験の豊富な先生なのでしょう。しかも、この処方は中国でも日本でも「風邪薬」として使われています。
応用して消炎効果を期待しているのだと思います。同じような例では、「清心蓮子飲(せいしんれんしいん)」という処方が、日本では、頻尿の薬とされていますが、中国では昔も今も「心腎不交」といって不安によるのぼせ・不眠に使われ、それに伴う頻尿・排尿痛にも使われています。実際、日本で「自律神経失調症」「更年期障害」と診断されている患者さんの中に、この処方で良くなっている例を多く見ます。
漢方薬は東洋医学の一部門です。東洋哲学は統合です。西洋医学は分析です。漢方薬の効果を出すためには、中国と日本などの違いを統合し、患者さんの側に立って研究を進めていかなければならないと思います。